2007年09月07日発行1001号

【保護者・市民が支える「君が代」訴訟 東京・府中市の中島暁さん不当処分取り消し裁判】

 学校現場での「日の丸」「君が代」強制をはね返そうと、新たな訴訟が幕を開けた。教員が地域の市民とともに立ち上がった画期的な訴訟だ。

 03年卒業式での「君が代」斉唱時の不起立を理由に、東京都教育委員会は府中市の小学校教員中島暁さんに対し戒告処分を行った。

 これに対して中島さんは、支援の市民らによる「府中『君が代』処分を考える会」(代表・鈴木功さん)とともに宣伝行動や署名運動で地域にこの問題を伝えて支援を広げる一方、東京都人事委員会に対して処分取り消しを申し立てた。ところが、本人の証言も聞かないまま、わずか1回だけで審理を打ち切るという異常な対応。中島さんは東京地裁への提訴に踏み切った。

 8月6日の第1回公判には多くの教員・市民らがかけつけた。冒頭陳述に立った中島さんは、被爆二世として平和運動に目を向けて生きてきた過程を振り返り、「皇民化教育が住民を戦争に駆り立てた沖縄戦の実相や元従軍慰安婦の証言を知り、『日の丸』『君が代』は侵略戦争のシンボルであり卒業式や入学式にふさわしいものではない、と確信している。校長自らが卒業式は『滞りなく終わった』と語っているように、処分理由の『職場の不名誉』などは存在しない。私の良心を強制で踏みにじるのは憲法違反だ」と述べた。

展望は「地域を変える」

 報告集会では松山大学大内裕和教授が講演。「全国一斉学力テストで生まれる学校間格差は地域の格差も広げる。今後は愛国心も競わせるだろう。派兵に応じる若者を作りだす新自由主義教育を許さない闘いを連帯して作り出そう」と励ました。

 裁判の特徴は、多くの保護者や市民が連帯して被処分者とともに運動に臨んでいることだ。「考える会」は公正判決を求める署名運動を呼びかけている。鈴木代表は「中島さんの処分問題で、市民の声を無視する学校の現実に直面し、私の目がさめた。審理の様子を広く伝えて市民の議論を起こすことが展望を作り出すと思う」と語る。

 中島さんは「府中市教育委員会は『市民に開かれている』と言っておきながら、学力テスト問題での申し入れについても『適切に実施』という紋切り的な対応だった。私の処分を求める上申書もきちんと公開させる。都教委の姿勢を問うのと同時に地域を変える運動が必要だ。市民とともに声を上げる運動を作りたい」と抱負を述べている。

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