ロゴ:ナルゲルのロゴ
(翼を)
2007年09月14日発行1002号(2007年9月21日号)

『(29)自業自得』

 1995年、日本の「平和と生活をむすぶ会」を紹介されました。釜山(プサン)から徴用され長崎で被爆した金順吉(キム・スンギル)さんの橋渡しでした。スンギルさんは、私が父の消息を聞いて回っていたときに会った一人で、以来、父のことを大変気にかけてくれた人でした。

 日本の運動家に感じるのは、韓国とは違って、自分の本業を持ちながら時間を作って手弁当で戦後補償運動に取り組んでいるところです。「右傾化」の社会に抗し、そこから抜け出して自分の正しいと信じる道を歩んでいる。家族もあり、仕事もあるが、時間もお金も使って運動している姿には頭が下がります。

 スンギルさんから広島で開かれていた原爆被爆者の写真展に誘われました。そこである参加者から感想を聞かれたときのこと。私は開口一番、「自業自得では」。その人の顔色が急に変わったことを覚えています。

 「自業自得」とは、自分が何か悪いことをしたら見返りで罰を受けるという意味でしょう。私は、被害者たちに言っているのではなく日本政府に向けて言ったつもりだが、間違えて受け止められた。政府が罪を犯しているのに罰は関係ない人たちが受けてしまったわけですから、被爆はひどい話です。

 スンギルさんはほほえみながら私の肩をポンポンとたたきました。気持ちはよくわかる、といった表情でした。そしてみなさんに私の発言の趣旨を説明してくれたようです。

 95年5月、むすぶ会の豆多敏紀さんの案内で阪神大震災の被災地を訪れました。地震は1月に起きたのですが、半壊したままの状態のお店の片隅で細々と営業しているお茶屋さんの姿を覚えています。韓国なら泣きわめいてパニック状態が続くところです。日本人は被害の事実を受け入れて静かに淡々と復旧を待っている、といった印象でした。

 被災地を訪れたとき失態を犯しました。被災地でテント生活をしている方と話し合っているときだったと思います。被災者を見てどう思うか尋ねられ、「犠牲者のご冥福をお祈りします。みなさんは災害による、私は人災による被害者です」と答えたまではよかったのですが、なぜか、私はそこでも「自業自得だ」と発してしまった。

 この言葉を被災者はどう受け止めたでしょうか。何か不幸があると、それは何かの罰だと一般的に話されることはあるのですが、地震は自然災害で、この場合は見返りの罰とかではないですよね。よほど日本人に対する怒りがあったのでしょう。私はほんとに恥ずかしいことを言ってしまった。申し訳ない、情けないと反省しています。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS