1008年11月02日発行1008号

札幌市 無防備署名 4万5734筆を提出

【地域の政治を変える市民の潜在力】

無防備地域宣言をめざす札幌市民の会共同代表・請求代表者 森啓さんに聞く

 札幌市の無防備平和条例制定直接請求署名は4万筆を大きく突破。10月19日、4万5734筆分が市選挙管理委員会に提出された。無防備地域宣言をめざす札幌市民の会共同代表で請求代表者の森啓北海学園大教授に今回の署名活動を振り返り、今後の抱負について話してもらった。(インタビューは10月15日。まとめは編集部)

●署名は法定数を大きく突破しました

 人口160万人で、有権者の50分の1、3万1200人が法定数。当初、集める私たちの人数は少なく、法定数を超えることができるだろうかと思った。それが30日間の努力の結果、昨夜(10月14日)で4万691筆の署名が集まった。

 本州から札幌に向かって第21番目の波が来たわけだが、今度は札幌から道内・全国に大きな潮のように広げていきたい、広がってほしいと思う。

第1ラウンドは成功

●署名活動の意義について

 戦後65年が経ち、日本の社会は自分が主体として行動することによって社会に影響を与えるという感覚が体験としてなくなり、無力感がある。

 もう1つは、状況追随思考。どうしてそうなったかを考えないで、出てきた結果を動かざるものとして考える状況追随意識が蔓延している。

 その結果、今の若者だけでなく日本は亡国の民をつくった。日本社会やアジア、世界の中で自分がどのような位置関係にあるかを確かめることができないようにされ、しっかりと論理的に物事を考え、批判的に世の中の動きを見るという認識がとめどなく衰退している。

 そんな時に、ジュネーブ条約に根拠をおいて、戦争の差し迫った危険に対処するために、自分の名前を書き、印鑑を押し、生年月日を書く。署名する人も求める側も、自分自身が1個の人間として行動していこうと4万筆を超える状況に至った。

 札幌市議会が日本の現代史の中で初めて無防備平和を決議することになれば、札幌の名声はすこぶる高いものになる。そういう運動を自分たちがしたということが確認でき、第1ラウンド成功の意義は大きいと思う。

後半はものすごい勢い

●「市民の可能性」について

 既存の政党や労働組合、革新団体が署名を集めようとする時、機関を通して伝達し、組織動員する。しかし、労組に例をとると、求心力は失われ、組織率は低下し、指令がほとんど及ばない昨今だ。

 組織の各級役員は旧来の感覚で、一般市民に呼びかけ署名を集めることが想像できない。可能性の想像がつかない。無防備の運動を起こそうとする時、時期尚早とか、もう少し準備を整えてから、という意見が役員から出てくる。つまり、永久に意思決定ができなくなっている。

 それは、従来の組織運営の感覚と論理で結論をだそうとするからだ。裏から考えると、署名を集めている時、かなりの方々がこの署名はどのような団体がしているのかと聞く。牧師や大学教員、市民がしていると答えると、「それではやります」。既存の組織がしているのであれば、したくないと言うのだ。

 署名には、日を追って共感が広がり、自信ができ、そして、後半にはものすごい勢いで署名者が増えた。

 これは、既存の感覚ではわからない市民の潜在力があるということで、市民の可能性だ。市民の自治意識によって地域の政治勢力が、政治地図が変わっていくという可能性がみえてきた。

●第2ラウンドへの抱負を

 国の省庁は神経をとがらして無防備平和条例を葬り去ろうとしている。首長が所見をつける場合、こういう問題がある、こういうふうに書け、などとして、議会になじまないとすることがある。そして、20の自治体は否決した。

条例制定への働きかけ

 首長や議会には、既成の観念にとらわれないで未来をつくるという考え方でぜひ審議をしてもらう。

 私たちがそれを期待し待っているのではだめで、議会への働きかけ、議員個人への働きかけもする。多数の市民が傍聴する形で議会審議がなされ、簡単に否決することにならないようにしていく必要がある。これが第2ラウンドの重要な内容だ。直接請求が成功したからよかったで終わることなく、現実に条例制定へ議決をする方向にもっていかなければならない。

●ありがとうございました

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