2010年01月01日発行 1115号

【IFC第2回大会報告(1)  「安全・パン・自由」を掲げて 暴力と腐敗が深刻化するイラク社会 IFCの前進が悪化をとめる】

  イラク自由会議(IFC)は09年12月11日、イラク北部の都市キルクークで第2回大会を開催した。依然として占領状態が続くイラク社会は暴力と腐敗が 蔓延し、人々の生活に改善の兆しは見えない。IFC大会は民衆が今もっとも必要としている「安全・パン・自由」を実現する政教分離・非民族主義政府の樹立 を掲げた。多くの青年・女性代議員の参加で成功裏に終えた大会の意義について順次報告する。(豊田護)

治安の混沌

 「もしバグダッドに会場を決めていたなら、大会は開けなかっただろう」

 サミール・アディルIFC議長は大会前日(12月10日)、各地域から入る情報を携帯電話で受けながら、そうつぶやいた。2日前(12月8日)バグダッ ドで政府機関の庁舎を中心に5件の爆弾事件がおきていた。130人以上が死亡、400人以上のけが人が出た。身内に犠牲者が出た大会代議員もいる。バグ ダッドでは、8月19日(血の水曜日)、10月25日(血の日曜日)と100人以上の死者を出す爆弾事件がおき、今回の血の火曜日が続いて「安全な曜日は なくなったのか」と言われている。

 宗派抗争が最も激しかった06〜07年頃に比べれば爆弾事件は少なくなったとはいえ、一般市民が巻き添えになっている事実に変わりはない。宗派抗争が終 わっているわけでもない。都市部から撤退したはずの米軍もイラク政府の要請を口実にバグダッドやキルクークの街に姿を現している。

 IFCは当初バグダッド開催をめざしていた。首都で開催できれば、政治的効果はより大きくなるからだ。だが、最終的に日本参加団をはじめ代議員の安全確保のために、第1回大会(07年10月)と同じキルクーク開催を決めた。その判断は正しかった。

 だが、キルクークが安全であるかと言えばそうでもない。サミール議長自身、08年12月、郊外の大型レストランで爆弾事件に巻き込まれ、九死に一生を得ている。また大会翌日には、キルクーク市内でも爆弾事件があり警察官ら数人が殺された。そんな中での大会開催であった。

大会成立

 大会会場は市街地から車で15分ほどの郊外。スレイマニヤに向かう幹線道路沿いの結婚式場が選ばれた。周辺にはまったく建物がない。車の姿は、はるか遠くから確認することができる。

 大会代議員は175人。イラク全18州のうち14州から75人、青年学生局から40人、女性局から15人など地域支部及び機関ごとに代議員定数が割り振 られた。当日の出席代議員は104人。大会は成立した。南部・中部からバス2台でやってきた代議員たち。最も遠いバスラ州からは約900キロ、2日がかり の道のりだ。途中20か所を超える検問所がある。数キロごとに停車と待機を繰り返しながらの参加だった。

 大会は、占領の犠牲となった同志・民衆への黙祷から始まった。開会あいさつでサミール議長は「この大会は、IFCの命運だけでなくイラク社会の行く末を 決める重要な大会だ」と並々ならぬ決意を語った。「IFCが前進しなければ社会は悪化する。治安の混沌から抜け出して、社会建設に向かわねばならない」

 続く来賓あいさつの最初に、MDS(民主主義的社会主義運動)佐藤和義委員長が紹介され、万雷の拍手を受けた。佐藤委員長は「MDSはなぜイラク民衆と 連帯して闘うのか。グローバル資本主義の戦争路線をやめさせるためだ」と語り、IFCが掲げる政教分離・民主主義政府の樹立に向けた大会成功への期待を述 べた。特にサナテレビの日常経費支援の取り組みを報告した。

 他にイラク労働者共産党・クルディスタン労働者共産党・南部石油労組・GFWCUI(全イラク労働者評議会労働者組合連合)・ジャーナリストユニオンから連帯のあいさつがあった。芸術家組合など参加できなかった団体からの連帯メッセージも紹介された。

青年・女性が軸

 大会は執行委員会で採択された文書(本紙第1112号に既報)をもとに議論がなされた。サミール議長は、前回大会からの2年間を総括し、強力なリーダー 群の不在、財政基盤の欠如などIFCの弱点を率直に提起した。ますます暴力と腐敗を深めるイラク社会にあって第一線でIFCの方針を実践する指導部の形成 を訴えた(大会議論の内容は次号以降で紹介する)。

 この他に特別決議が採択された。提案者は、バスラ大学学生アリ・ニヤジ(23)。青年・学生の全国組織結成へIFCの支援を求めるものだ。満場一致、大 きな拍手で採択されたことはいうまでもない。ここに大会の成功が象徴的に示されている。必要とされるリーダー群の軸に青年・女性が座ることだ。

 会場を見渡すと、青年・女性代議員の姿が目立つ。第1回大会で10人あまりだった青年層は、倍以上に増えている。女性の代議員も大幅に増えた。サミール 議長によると、青年・女性を優先して代議員の定数を割り振った結果、選出代議員の3割を超えたという。情勢の変化に対応し、要請される課題にIFCが正面 から取り組むためにも青年・女性の活動に重点を置く必要があるからだ。

 「200以上の大学に組織は拡大している。大会終了までIFCへの加盟を待ってもらっている」とサミール議長は言った。イラクの青年・学生たちはIFCを求めている。(続) 
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