2010年6月18日発行1137号

【6・16ヤンマー闘争を支援する会結成へ / 派遣労働根絶めざす稲森秀司さんの思い / 「今必要なのは資金と事務所」】

 6月16日、滋賀県長浜市内で「ヤンマー闘争を支援する会」が結成される。自らの争議のみならず日系人労働者の相談活動などにも取り組み、派遣労働の根絶をめざすヤンマー争議原告の一人・稲森秀司さんの思いを通して、支援体制確立の意義を訴えたい。


7月2日に判決

 ヤンマー雇い止め違法訴訟に立ち上がる原告は佐々木真一郎さんと稲森秀司さんの2人。そのうち、稲森さんの裁判は7月2日、大津地裁長浜支部で判決を迎える。代理人を立てない本人訴訟だ。

 「お金がないからね。お金がない分は知恵を出すしかなかった。すべて独学です。インターネットや図書館で調べて、訴状や準備書面など全部一人でつくりました」

 稲森さんは08年1月から派遣会社AOCを通してヤンマーびわ工場で働き始めた。08年9月、滋賀労働局の指導で直接雇用の期間従業員となる。08年12月、バランスを崩したクランクシャフトの重い鉄の塊を手で受けとめようとして労災事故。両肩と右ひじを強く捻挫した。その後、派遣パートユニオン関西に加入する。組合活動を嫌悪する会社は組合弱体化を狙って大量解雇攻撃に出た。09年2月、250名の期間従業員とともに雇い止め解雇となった。初回契約の5か月で解雇だ。

 「判決の焦点は解雇の不当性だけです。あえて損害賠償請求だけにしたのは、解雇の不当性を争点にするためです。それが認定されれば地位確認を求める佐々木さんの裁判にも影響します」

 大阪地裁に地位確認を求める佐々木さんの裁判と稲森さんの裁判闘争は連携プレーなのだ。

労災多発の非正規労働

 稲森さんは自らの争議だけでなく外国人労働者の相談や団体交渉で多忙な日々を送っている。滋賀県内には日系ブラジル・ペルー人らが多く働き住んでいる。

 今、深刻なのは森林組合で雇われる日系人だ。3か月間という限定雇用。技術指導もろくにしないまま働かせるため、チェーンソーで指を切断する事故が多発している。労災発生と同時に解雇だ。稲森さんの労災も後遺障害が残り、いまだに手にしびれがあり、右手人差し指は真っ直ぐに伸びない。障害14級の認定を受けている。労災治癒期間中の解雇は明らかに違法だ。非正規労働の現場は安全が脅かされ、危険に満ちている。

 「正社員と非正規では労働時間が違う。社員は残業規制があるが、非正規はないに等しい。休日出勤は当たり前、13日間連続勤務もしました。そもそも社員は危険な現場にはいません」

国際世論にも訴える

 最近、ヤンマー本社や工場前の抗議行動では『ヤンマー争議の歌』が必ず披露され、注目を集めている。替え歌をつくったのは稲森さんだ。

 「ヤンマーが嫌がることをずっと考えていた。マイクで演説しても、一部だけしか記憶に残らない。この歌は1回聞いたら忘れないでしょ。実は、僕らがヤンマーの制服を着て門前に立っていることも会社はものすごく嫌がっているそうですよ」

 「今一番何が必要ですか」と問うと、すぐに返事が返っ9てきた。「交渉や相談などで移動するための資金。事務所もあればもっと労働相談が増えますよ」

 この1年で、日系人らの労働相談では50社以上と団体交渉をしている。しかし、車はない。国際A級ライセンスは持っているが、バイクもない。「こんなところで労働相談をしている」と案内されたのは駅前の大型スーパーの休憩スペース。丸テーブルと椅子が2つあるだけだ。

 稲森さん自身、この6月から生活保護受給者となった。それでも派遣労働根絶の実現へ知恵は次々と湧き出る。今、力を入れ始めたのはパナソニック争議の吉岡力さんらとともに国連人権理事会など国際世論に訴えることだ。

 「個人通報制度は日本はまだ批准していない。しかし、批准している中南米諸国の日系人を通して日本の派遣労働を告発することはできるでしょ。国際問題になりますよ」

 長浜の地から全国の非正規労働者や外国人労働者とともに派遣労働の根絶を国内外に呼びかけているのが、ヤンマー闘争だ。支援体制の確立は急務である。

  • ヤンマー闘争を支援する会結成のつどい
    • 6月16日(水)18:30から
    • 長浜市勤労者福祉会館・臨湖(JR長浜駅より徒歩10分)
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS