2011年04月08日発行 1177号

【広がるフクシマ・ショック/世界各地で脱原発の動き/されど日本は原発ビジネス】

 世界を震撼させた「フクシマ原発事故」。「安全神話」の崩壊を目の当たりにして、各国では 脱原発の気運が再び高まっている。それなのに当の日本はというと、政府・財界ともに「原子力利用政策に変更はない」と強弁している。彼らはなぜ原発推進に しがみつくのか。その背景には、官民一体で進めている原発輸出ビジネスがある。

各国で反原発運動

 近年、世界ではエネルギー需要の増大や温暖化防止対策として原子力発電の再評価が進んでいると言われてきた。だが、福島の事故は「世界を一変させ た」(エッティンガー欧州委員)。反原発運動の広がりを受け、各国政府は政策転換を迫られている。

 ドイツでは3月12日、約6万人の市民が、南西部シュツットガルトとネッカーベストハイムにある原発間の45キロを「人間の鎖」でつなぎ、原発の閉鎖を 要求した。3月26日には、国内にある原発の即時停止などを求めるデモがベルリンやミュンヘンなど4つの大都市で行われ、合わせて25万人が参加した。

 こうした反原発世論の高まりにドイツ政府は素早く反応した。メルケル首相は昨秋決めたばかりの「原発の運転延長政策」の凍結を表明。国内17基の原発の うち旧型7基の運転一時停止に踏み切った。3月17日には首相が議会で演説し、原発からの脱却を加速する方針を明らかにした。

 ドイツは、02年の原子力法改正によって原子力発電からの撤退を決めていた。だが、09年9月の政権交代で誕生した新政権は「脱原発」政策を先送りし、 国内原発の稼働年数を平均で12年間延長するとした。この原発延命政策をフクシマ・ショックが吹き飛ばしたというわけだ。

 欧州全体の動きをみると、欧州連合は3月15日、ブリュッセルで特別会合を開き、原発の危機管理と安全対策の見直しに着手した。スイスやイタリアでは、 政府が原発の改修や新規建設計画の一時中断を決めている。

大量破壊兵器と同じ

 脱原発の動きはアジアでも起きている。タイでは3月15日、環境保護団体がタイ国内で現在進められている原発開発をすべて取りやめにするよう、政府に強 く訴えた。原発建設候補地のひとつ、東北カラシン県では住民2千人以上が県庁前に集結。原発計画に積極的な議員を名指しで非難するなどして、建設計画の撤 回を求めた。

 104基の原子炉を持つ米国はどうか。オバマ政権は原発推進の方針を変えていないが、国内では不安の声が高まっている。「社会的責任を果たすための医師 団」のメンバーであるアイラ・ヘルファンド医師は「原発とは本質的に、われわれが自ら市街地に隣接して建設した大量破壊兵器だ。自然災害や人災などが制御 不能となった場合、多くの人びとが人質になる」と原発の危険性を訴えた。

 たしかに、ひとたび原発で大事故が起きれば、空気も水も食べ物も放射能で汚染されてしまう。そんな事態が現実のものとなった今、まともな感覚の持ち主な ら誰もが賛同する意見といえる。

経団連の大バカ発言

 ところが、まともではない連中がこの日本にいた。日本経団連の米倉弘昌会長は3月16日、福島原発の事故について「千年に1度の津波に耐えているのは素 晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と述べ、政府や東京電力を擁護した。

 この2日前には、経済同友会の桜井正光代表幹事が「震災があったからといって原子力政策を曲げていくことはあってはならない」と語っている。与謝野馨経 済財政担当相も「将来とも原子力は日本の社会や経済を支える重要なエネルギー源であることは間違いない」と語り、あくまでも原発を続けるべきだとの考えを 示した(3/22)。

 放射能漏れが止まらない状況下で「日本の原発は素晴らしい」と言い切る連中の神経を疑ってしまうが、政府・財界にはそうアピールしなければならない事情 がある。官民一体で進めている原発輸出ビジネスである。

 原発輸出は民主党政権の重点政策のひとつで、首相自らが原発セールスに狂奔している。昨年10月には、原発売り込みのための官民合同出資会社が設立され (電力会社や原子炉・関連機器メーカー等13社が参加)、ベトナムでの原発受注に成功している。

 原発は1基の受注額が約4千億円規模のビッグビジネスだ。原子炉メーカーの東芝は2015年までに39基、三菱重工は2025年までに30基の受注を 狙っている。また、原発の関連機器や原発用の素材生産でも日本企業は高い国際競争力を有している。

 つまり、日本のグローバル資本にとって原発は「カネのなる木」ということだ。彼らは今回の事故で「日の丸原発」のブランドに傷がつくことを恐れているの である。

 しかし、これは無駄なあがきというものだ。「原発安全神話」が崩壊した今、エネルギー政策の見直しは必至である。人類と原発は共存できない。子どもたち の未来のためにも、脱原発こそが正しい選択なのだ。     (M)
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS