2011年04月29日発行 1180号

【「原発なくせば電力不足」はウソ ―原発は即時廃止しかない―】

 政府は4月12日、福島第1原発事故の深刻度評価を「レベル5」から2ランク上の「レベル 7」に引き上げた。ひとたび原発事故が起これば、日本ばかりか全世界に放射能がまき散らされることが改めて証明された。原発はもはや止める以外にない。多 くの国民が「電力の3割は原発に依存している」「原発をやめれば電力が不足する」と信じ込まされているが、それは原発推進のための大ウソである。

大地震が原発事故を招く

 いま福島第1原発で起こっていることは、中部電力の浜岡原発(静岡県御前崎市)で近い将来起こる危険性が高いと指摘されてきたことだ。

 日本列島は北米プレート(注)とユーラシアプレートの上に乗っている。北米プレートの下に太平洋プレートがもぐり込んだ反動で起こったのが、今回の大地 震だ。一方、ユーラシアプレートの下にはフィリピン海プレートがもぐり込んでおり、浜岡原発はまさにそのユーラシアプレートの先端部分に建っている。

 近い将来起こるであろう東海大地震は、今回と同じプレート境界型であることから、M(マグニチュード)8以上の規模で大津波を伴うと予測されている。

 浜岡原発の運転差し止めを求めた訴訟でも、地震の影響で非常用電源が作動しないことはないのかという点が争われたが、中部電力側証人として出廷した班目 (まだらめ)春樹・東大教授(現・原子力安全委委員長)は「想定していない」と明言した。「可能性があるものを全部組み合わせていったら、モノなんて造れ ないから割り切った」と開き直った。

 今から後追いで「安全対策」を強化したとしても、事故が起こらない保証などない。原発は一度重大事故が起きれば制御不能となり大惨事を引き起こすこと が、もはや誰の目にも明らかだ。

 日本は世界で発生する地震の約1割が集中する地震大国だ。大地震はプレート境界だけでなく、阪神淡路大地震のように断層に沿って起こることもある。福 島、浜岡だけではない。どこでも原発事故が起こる可能性はある。

 今回の事故を教訓に、すべての原発をただちに停止させ、廃炉とすべきだ。

火力を止めて原発フル稼働

 原発廃止の主張に対して、原発推進派は「原発をなくせば、電力が不足する」と言う。だが、これはウソだ。

 まず日本の電力需要の過去最高実績は、2001年7月24日午後3時の1億8269万`ワットだ。それに対し、「2010年度電力供給計画」(資源エネ ルギー庁)によれば、原発を除いた電力供給能力は1億9263万`ワット(09年推定実績)で、基本的に原発を止めても電力は足りる(別表)。

 ところで電力供給能力では約62%を占める火力発電の稼働率は46%ほどにすぎない(09年)。これはなぜか。

 原発は火力や水力と違って一度運転し始めると出力調整ができず、常にフル稼働しなければならない。ところが原発をフル稼働させると電力が過剰供給になる ので、発電能力を持つ火力や水力をあえて停止させるというやり方がとられている。その結果、真夏のピーク時以外は火力の半分以上が休止している。つまり、 宣伝されている「原発依存率=約3割」は作られた数字であり、火力と水力をフル稼働させれば、原発がなくても基本的な電力需要はまかなえる。

 実際、2003年には東京電力の事故隠し発覚で管内の原発17基(計1730万`ワット)すべてが停止される事態となったが、停電ひとつ起きなかった。

 消費電力のピークは、真夏の数日間の真昼の時間帯に集中している。だから、その間の消費電力を分散させるだけでピークの水準は大幅に下げることができ る。また大企業向け料金割引制度を廃止し、家庭向け料金制度と同じように使えば使うほど高くなるように変更すれば、計算高い企業は自ら節電に励むことは間 違いない。

自然エネルギーへの転換を

 原発廃止と並行して、自然エネルギーを利用した発電の開発を進める必要がある。

 現在各地に建設されている陸上型の風力発電は、耐震性や騒音などの問題もあり、当初期待されたほど普及していない。それに代わって期待されているのが、 九州大の研究チームが開発している洋上風力発電で、1ユニットで原発1基分に相当する100万`ワットの発電も可能だという。デンマークでは洋上風力発電 が実用化されている。

 そのほか、火山国であるという特性を生かした地熱発電(イタリア)、波の力を利用した波力発電(ノルウェー)、潮の満ち引きを利用した潮力発電(フラン ス)なども海外では実用化されている。

 「制御できない原子力利用をやめろ」「原発を即時停止しろ」の声を広げ、すべての原発の廃止を迫っていかなければならない。

(注)プレート
 大陸や海洋底をおおう岩盤のこと。
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