2012年01月06・13日発行 1214号

【ふくしま集団疎開裁判 子どもの命切り捨てる不当判断】

 福島県郡山市の14家族が「安全な環境で教育を受ける権利」を求めて提訴していた「ふくし ま集団疎開裁判」で、福島地裁郡山支部は12月16日、放射線量の少ない地域での教育活動を行うよう行政に求めた仮処分申請を却下した。

 同じ16日、野田首相は何の根拠もなく「冷温停止状態」「事故は収束」と宣言し、事故被害者の要求を切り捨て再稼働へと大きく踏み出した。地裁決定は賠 償切り縮めの動きに応えたきわめて政治的なものである。「住民の避難による経済活動の縮小」を恐れる行政当局におもねる不当決定だ。

健康被害救済を拒む

 福島地裁は原告の請求について、全員が避難を望んでいるわけではなく、一度避難後福島に戻ってきている人がいることや、「除染」が行われていること、ガ ンなどの晩発性障害が出るかどうかは原告らの今後の生活などの不確定要因に左右されることなどを理由に、市に学校の閉鎖を命じることまではできない、と父 母らの申し立てを却下した。1人でも郡山に残りたいと考える子どもがいる限り集団疎開は実現せず、「晩発性障害が確実に出ることを前提とした生活」をして いない限り健康被害の救済もされないということになる。

原告主張は否定できず

 だが、地裁決定は、命を守れと求める原告の声を無視することはできなかった。請求に対し、郡山市は「父母らには住所移転の権利もある。市はここで教育を 受けさせるよう強制しているわけでもなく、転校したければ勝手にすればいい」と主張していた。決定は、児童生徒の危険が学校の責任によるものでなくても、 当局には教育環境の安全に配慮する義務があるとして、市の主張を退けた。

 また、「100ミリシーベルト以下では健康被害は証明されていない」など御用学者受け売りの主張についても「(因果関係が科学的に)不明であるからこ そ、…できるだけ安全面を考慮した基準が設定されるのであり、…被曝は少ないに越したことはない」とした。その上で、ICRP(国際放射線防護委員会)の 「年間1ミリシーベルト以下」の被曝基準についても「絶対的なものではない」から「通常より高い放射線量による被曝のおそれがある限り、放射線の影響を受 けやすい児童生徒を集団で避難させることは、…政策上の選択肢の一つとなり得る」と原告らの主張をほぼ認めた。

 申し立ての却下に対し、「ふくしま集団疎開裁判の会」はじめ被害者は抗議の声を上げている。子どもたちの避難を求め、引き続き避難の権利を認めさせる運 動が必要だ。
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