2012年01月06・13日発行 1214号

【再稼働のアリバイ作りは許さない ストレステスト意見聴取会に大衆的傍聴を】

 原発再稼働の条件とされるストレステスト(耐性検査)について専門家の意見を聞く原子力安 全・保安院主催の意見聴取会が12月22日、経済産業省内で開かれた。

 委員11人のうち反原発の立場が明確なのは、井野博満・東大名誉教授(柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会代表)と後藤政志・芝浦工大講師 (元東芝原子炉格納容器設計者)の2人。

 進行役の岡本孝司委員(東大工学研究科原子力専攻教授)が「原子炉の安全性の総合的評価を示すことが使命」と述べたのに対し、井野委員は「福島の事故を 津波だけでなく地震の影響についてもきちんと検証することが前提ではないか。そのこと抜きにストレステストの意味はない」。後藤委員は「多重防護が破られ るおそれこそ重視すべき。原子力業界の中にいた人間が同じ考え方で調査して事故が防げるなんて誰も信じない」と福島事故の徹底検証と責任追及の重要性を強 調した。

公正性なき安全審査

 しかし、岡本委員は「地震についてはほぼ大丈夫だったとの報告がある」、別の委員も「この会が早期に結論を出すことが社会の要請」と審議を急ぐ。井野委 員は「何が社会の要請なのか。原発を再開することか。明らかな社会の要請は、安全性を十分議論しろということ。時期を区切るべきではない」と反論した。

 結局、予定された議題のうち北海道電力泊1号機については事業者の説明にさえ入れなかった。井野、後藤両委員の奮闘が聴取会の審議を大きく遅らせてい る。

 この日、保安院が提出した資料には、白抜きされた個所があった。削除されたのは、聴取会に出席した原子力安全基盤機構(原発の検査を行なう独立行政法 人)職員のうち三菱重工OBである3人の名前と、聴取会委員の1人が三菱重工の関連企業から3千万円を超す研究費を受け取っていたとする報道。どちらも、 原発を作った側が原発を検査する側に回り、安全審査の公正性・中立性など成り立たない事実を裏付ける情報だ。ストレステストの欺瞞性がここにも示されてい る。意見聴取会の傍聴体制を強め、井野・後藤両委員を激励し、再稼働のアリバイ作りをつぶそう。


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