2012年03月02日発行 1221号

【本当のフクシマ 原発震災現場から/第3回 “カナリア”の皮膚感覚/敏感な人ほど影響が早い】

謎の体調不良


 放射能による健康被害が小動物→子ども→敏感な成人→一般の成人の順に現れるということは、前回に述べた。成人でも早くから体調不良を訴え始めたのは汚 染物質に敏感な人たちだ。特に多いのは「福島市に行くと体調が悪くなる」という声だった。

  実は、私自身がそうした体調不良を経験した。原発事故以降、自宅のある西郷村から福島市には集会・デモ等で3回足を踏み入れたが、その3度とも翌日から翌 々日に仕事を休まなければならないほどの体調不良に見舞われたのだ。

  連れ合いに聞くと、福島市から帰ってきても体調に変化はないという。私は花粉症と食物アレルギーを持っており、自分だけの特異現象なのだろうと思ってい た。だが、郡山市訪問後には、そのような体調不良は起こらない。福島市の汚染が想像以上に深刻なのではないかという疑いが私の中で強まった。

 昨年末、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の集まりで郡山市に行ったときのことだ。郡山在住の女性から、福島市に行くと体調が悪化すると いう話を聞いた。「何かアレルギーや持病はないか」と尋ねると、化学物質過敏症との答えが返ってきた。その答えで納得した。

  「私たちはカナリアだね」と彼女は私に言った。持病のある人やアレルギー体質の人は放射能の影響が大きいことがわかった。

深刻な「面の汚染」

 土壌中の放射性セシウム濃度が1平方メートルあたり60万ベクレルを越える汚染地域は郡山市にはほとんど存在しないが、福島市には面的に存在する。空間 線量でも1時間あたり2マイクロシーベルトを越える地域が福島市には面として存在している。文部科学省の航空機モニタリングが教えてくれた汚染の現実だ。 御用学者やメディアがいかに「安全」「直ちに健康に影響はない」を連呼しようと、「カナリアの皮膚感覚」は確かだった。

  3回目の体調不良を起こして以降、私は福島市には行かないと決めた。

  *  *  *

 市民による空間線量測定に対し「土壌を計らないと無意味」と否定する人がいる。だが私は無意味とは思わない。放射性物質が多ければ、そこから発せられる 放射線も多くなり、空間線量にも反映する。線量計を持ち、ホットスポットを避けながら生活するのは合理的な放射能防護策だ。



     (水樹 平和)
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