2012年04月06日発行 1226号

【復興がすすまないのは"がれき"のせいか?/利権先行・被災者無視の復興計画】

 「復興事業の司令塔、復興庁発足」「19兆円の復興予算計上」―組織も予算もあるのに、被 災住民の生活再建のめどはたたない。政府・マスコミは、「みんなでがれき処理」キャンペーンで受け入れを拒む自治体や反対住民にその責任を押しつけようと している。しかし、生活再建が進まない原因は、弱者(地方)切り捨ての新自由主義政策の延長線上で「復興」を推し進めようとしていることにある。


施設整備のみの復興

 今年2月、10年間の期限付きで復興庁が発足した。「被災地に寄り添いながら、前例にとらわれず、果断に復興事業を実施するための組織」と自らを位置づ けるが、早くも看板の偽りが露呈している。

 被災地支援策の目玉の一つ復興交付金。「使い道は地元自治体の自由」との触れ込みだった。宮城県は道路や下水道の工事など復興交付金2016億円を申請 したが、4割以上カット。1161億円しか認められなかった。復興庁は、被災地以外の道路工事は対象外として削ったという。これに対し宮城県知事は「復興 庁は査定庁だ」と不満をぶつけた。ただ、復興に便乗し建設事業拡大を図った知事も発想は政府と変わらない。

 復興の第一は、まず被災住民の生活再建、居住と雇用を速やかに確保することでなければならない。政府・行政当局にその視点はない。

 復興予算は、2011年度中に3度の補正が組まれ、17兆7千億円が計上された。12年度当初予算とあわせれば19兆円を超える。しかしその大半は施設 建設関連費で、被災住民の生活再建のための予算は、従来の被災者生活再建支援法に基づく支援金補助金3千億円にすぎない。

 避難生活を余儀なくされている人はいまだ34万人以上、有効求職者数は14万3千人に上る。被災者が求める住宅の提供や仕事の創出を行う復興事業はここ にはない。

 復興事業は地元に雇用機会を作り出す、と考えたら大間違いだ。例えばがれき処理。汚染を全国に拡散しゼネコンを潤すだけの広域処理は論外としても、地元 処理なら即OKとは言えないことが起こっている。

大手ゼネコンが独占

 宮城県では12市町の委託を受けて県ががれき処理に当たっている。県は4ブロックに分けて、業務発注。そのうち最大の826万トンが堆積する石巻ブロッ クを鹿島JV(共同企業体)が約1923億円で請け負った。鹿島JVは入札に当たって「地元雇用は1日あたり1250人、のべ67万4千人を目標」と掲げ ていた。

 ところが「儲かるのは元請と1次下請けまで」(2/29東京新聞)と地元業者は語っている。ゼネコンは人と機械を持ち込むため、地元業者は1次下請けに も入れない。この構造は震災前と同じだ。新自由主義政策の下、公共事業の削減は零細建設業者を淘汰し、独占化・系列化を進めた。「地元雇用」とは、その場 限りの有期雇用でしかない。被災者が望む安定した職とはほど遠い。

 大手ゼネコンの独占はがれき処理ばかりではない。環境庁が発注した警戒区域内での除染モデル事業も大成建設が受注した。大手ゼネコン50社の受注額は、 全国的には減少しているにもかかわらず、被災した3県では対前年比2倍になった。「12〜13年度にかけて、復興需要が建設業界の利益を8千億〜9千億円 押し上げる」(3/14日経)と予想されている。

 広域処理対象の400万トンのがれきを運ぶには10トンダンプで40万台が必要。関東圏に限っても往復1千`メートルを走らせることになる。費用は1千 億円とも言われる。復興を口実に生み出される不要な事業こそ、被災者を二の次にした利権まみれ事業と批判されねばならない。

公的補償の拡大を

 では、被災者が望む民主的復興とするにはどうすればよいか。これまでの経済産業政策を改めるところからだ。



 東北3県は震災前から人口減少が続いていた。大震災がなかったとしても今後30年間で、岩手40%、宮城25%、福島36%のマイナスが予測されてい た。新自由主義政策が招いた地方切り捨ての結果だ。新幹線や高速道路を通しても、地場産業が根付くわけでもなく、かえって大都市圏への集中が加速された。 地域の基幹産業である農林漁業は早くから切り捨てられ、後継者が育つ条件はなくなっている。

 各自治体から出されている「復興特区」はこの延長線上にある。例えば5年間の税減免により企業誘致を行おうとするものが多いが、期待どおりにはなるとは 限らない。減免期間が過ぎれば、その地にいる理由はなくなるのが資本の論理だからだ。資金繰りがつかず廃業に直面する中小零細企業の経営を支える直接的な 施策こそ必要だ。

 住居も同じ。防災集団移転促進事業の制度に乗れば、被災土地を自治体が買い取り、新たな造成地を提供する。しかし、被災土地の買取価格は、それまでの 5〜9割でしかない。造成地を購入すれば自己負担となる。経済的事情に違いがある中、被災者の意思を置き去りにしたままの移転計画には反対が噴出し、合意 を得るにいたっていない。

 「土地、家屋は個人資産」「個人補償はしない」を基本とする制度は、経済的弱者を切り捨てるものでしかない。被災前の生活を保障することを基本とし、復 興住宅を無償で提供するなどの公的補償政策を打ち出すべきだ。

 復興が進まないのは、がれきのせいではない。政府の「復興計画」そのものが、被災者の要求とはかけ離れた資本の利益優先だからである。
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS