2012年05月18日発行 1231号

【ノーモア尼崎事故4・21集会 遺族とともに、風化を許さない 命よりカネ優先にノー】

 2005年4月25日の事故から7年。兵庫県尼崎市で開かれた「ノーモア尼崎事故、生命と 安全を守る4・21集会」(主催:同実行委員会)の報告を「JRに安全と人権を! 株主・市民の会」の桐生隆文さんに寄せてもらった。

誰も責任を問われていない

 107名が死亡し500名以上が負傷するJR発足後最大の惨事となった福知山線尼崎事故。発生から7年が経過した。しかし、今に至るも誰一人として事故 の責任を問われた者はいない。起訴された山崎前社長に対して1月、神戸地裁は無罪を言い渡した。

 私たちは、この事故を忘れないとの思いをこめて、地元JR尼崎駅前で「ノーモア尼崎事故、生命と安全を守る4・21集会」を開催した。集会は事故後毎年 行われてきたものだ。国鉄労働者不当解雇撤回闘争が一定の解決を見た中で、昨年からは京都・大阪・兵庫の国労組合員有志が呼びかけの中心になり、私たち国 鉄闘争以来の共闘関係者とともに開催している。

 JR西日本の安全無視の経営体質を変えていくには会社内部での闘いが重要なカギを握る。

 今回の講演は『尼崎と福島。今私たちに問われているもの』と題して「安全問題研究会」の地脇聖孝さんにお願いした。福島原発事故での政府と東電の姿は、 JR尼崎事故以来の政府とJRの姿にうり二つであった。

 地脇さんは「尼崎と福島の共通点」として、「技術に対する過信と奢り」「隠す、過小評価する、嘘をつく」「国策による強力な推進体制―利益優先、安全軽 視」「闘う労働組合潰し」などを明らかにし、儲けのためには人の命など何とも思っていないグローバル資本の実態を暴いた。

 今後の闘いの方向性として「命のカネのどちらを選ぶのか。利益のためなら人が死んでもいいという価値観から命のために経済活動を規制する新たな価値観へ の転換」を提唱。JR西や東電など法人の責任を追及することは現行法制度では困難と指摘し、法人処罰制度のあり方を各国の制度を参考に紹介して講演を終え た。


裁判は無駄ではない

 尼崎事故の被害者たちは山崎前社長の無罪判決に怒り、検察の控訴断念に失望した。遺族は「JRの主張を鵜呑みにして、こんな大事故で無罪なんて」「これ で無罪ならどんな事故が起きても無罪になる」「組織を構成している一人すら有罪にできないなら組織罰を作り多額の賠償金を取るなどの手を考えなくては」と 話している。

 集会に参加した遺族の藤崎光子さんは山崎裁判について、「裁判は負けた、無駄だったのではないか、という人もいるが、私はそうは思わない。前社長が法廷 に立たされる、元社長たちが法廷に呼び出される。『被害者参加制度』がない時には、被害者が法廷の傍聴に徹夜で並ぶということもあったが、山崎裁判では 40の席が被害者に確保され、直接被告に尋問する機会や文書での陳述の機会が与えられた。昨年9月から神戸地検に通い続けている。手書きで書き写すだけし かできないが、闇から闇へと葬られる証拠が『被害者参加制度』で読めるようになった。事故調査委員会の漏えい問題一つとってみても、裁判は無駄ではなかっ た。これから井手、南谷、垣内の元社長が法廷に出てくることになる。私は期待している」と、この裁判と被害者参加制度の持つ意味を強調した。

 そして「皆さん方が尼崎事故を『国家的不当労働行為』の結果としてとらえてくれているのはうれしい。その不当労働行為を受けた皆さん方、国労組合員が事 故の風化を許さず、先頭に立って闘っていただきたいと思います」。私たちに対する叱咤(しった)と期待を語った。


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