2012年11月23日発行 1257号

【強制労働被害者補償立法へ 「日韓共同行動」が発足】

 戦時中、日本に強制動員された朝鮮人労働者に謝罪と補償を行う法律を日韓市民の共同で実現 しようと、10月27日、「強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動」が発足した。

 呼びかけの母体となったのは、強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク。2009年以降、補償法案づくりや内閣府への6万3959筆の署名提出、戦 後補償議連に対する働きかけなどを重ねてきた。民主党政権下、立法化が遅々として進まない一方、韓国では憲法裁判所決定(11年8月30日)、大法院判決 (12年5月24日)と、日本の植民地支配責任や韓国政府の不作為を断罪する司法判断が続く。今春、韓国市民の運動に応え、日本の政府と国会による立法解 決の努力を強く促す「朝鮮人強制労働被害者補償立法を求めるアピール」を発表。日本489人、韓国353人の賛同を得て、「共同行動」結成に至った。

 結成の集いであいさつした一橋大学名誉教授・田中宏さんは「日韓双方で意見を出し合い、きちっとした法案がつくれれば画期的なこと。今後政権がどうなろ うが、昔のように(韓国との関係で)いい加減なことはできない状況になっている」と述べた。

 記念シンポジウムでは、東北アジア歴史財団研究員・南相九(ナム・サング)さん、拓殖大学教授・佐藤健生さん、高麗博物館館長・樋口雄一さんの3人が報 告。

民衆同士の連帯を

 ナムさんは独島(竹島)問題について「日本は領土問題として、韓国は植民地化に起因する歴史問題として、とらえている。いつまで過去にこだわるのかと言 うが、その『損害と苦痛』がどんなものだったかの具体的調査はなく、政治家からは謝罪に反する発言がくり返されている」と批判。「立法運動は韓国人に、日 本の政府は右傾化していてもそうでない市民がいることを伝える意味で重要」と語った。

 佐藤さんはドイツの戦後の歩みにふれて「ヴァイツゼッカー大統領は『若い世代にも罪はないが責任はある』と訴えた。20歳の若者が『(ひざまずいてユダ ヤ人虐殺を謝罪した)ブラント首相は誇るべき政治家』と言う。日本はいくら謝罪しても次から次に閣僚発言が変わり、信頼されない。外国人から『日本の市民 のレベルは高いが、政治家に届いていない』とよく言われる」と、歴史の責任の世代を超えた継承の大切さを指摘した。

 樋口さんは「植民地朝鮮について日本人が知っているのは創氏改名、徴兵ぐらいだろう。韓国では植民地時代を『巨大な監獄』と呼ぶ。一方、朝鮮人と共に闘 おうとした日本人もいた。不正義に対する共通の闘いが新しい民衆同士の連帯を生む」と話した。

 「共同行動」は今後、全国会議員への働きかけや対企業行動、また韓国と共同して国際機関への要請、証言集会などを展開する。


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