2013年01月25日発行 1265号

【イラク労働者連帯ツアーの成功を 「検証」に値しない外務省報告書 イラク戦争検証委員会の設置を】

 12 月21日、外務省は「対イラク武力行使に関するわが国の対応(検証結果)」を発表した。何一つ「検証」の名に値しないわずか4ページの報告書で、政府のイ ラク戦争支持・参戦・占領参加の責任を闇に葬らせてはならない。今、占領前から闘い続けてきたイラク・バスラ石油労働者の声を直接聞く1月連帯ツアーの意 義は限りなく大きい。

小泉の証言すら求めず

 2003年に始まり、米国・英国・オランダ・日本などが参戦したイラク戦争から 10年。100万人以上のイラク人と4500人以上の占領軍兵士の命が奪われた。イラク国内外の難民は500万人に及ぶ。占領が生み出したマリキ腐敗政権 の下で、イラク市民はいまだに水も電気も十分になく、安全も保障されない生活を強いられている。

 ところが、外務省報告書は、日本政府自身がイラク戦争・占領の実行者であることを覆い隠し、「日本政府が米英等の武力行使を支持したことの是非自体について検証の対象としない」という前提で作成されている。

  事実関係や情報の収集、インタビューは外務省内部に限定。その内容さえこの報告書の他には一切公表していない。イラク戦争を支持し自衛隊をイラクに派兵し た当時の小泉首相ら政治家から何の証言も求めていない。占領軍によるイラク市民の虐待や殺戮、生活破壊、石油資源の略奪にはひと言の言及もない。

  さらに、「イラクに大量破壊兵器が存在しないことを証明する情報を外務省が得ていたとは確認できなかった」と、確認もされていない大量破壊兵器の存在の可 能性を理由に、戦争を支持し占領に参加したことを正当化。「この期間における外務省の対応において…概ね適切な対応がなされた」と居直っている。

 この文書作成の目的は、イラク戦争を支持し自衛隊派兵を強行した自公政権が再登場する中、イラク戦争検証への動きの幕引きを図ることにある。そして、いつでもどこででも戦争ができる派兵体制を作り上げ、憲法9条改悪の露払いをしようというわけだ。

 しかし、このような狙いは決して思う通りには進まない。

世界で進む検証・責任追及

  米国政府でさえイラクに大量破壊兵器がなかったことを認める1千ページの報告書を発表した。米国連邦議会では、イラク政府への数兆円に上る資金援助の不正 問題が定期的に報告されている。オランダのイラク戦争検証委員会は「(対イラク)軍事行動は国際法の下では何らの有効な権限付与も受けていなかった」と断 定した。イギリスの検証委員会は、ブレア首相を2度にわたり証人喚問した。オーストラリアでも、イラク戦争検証委員会設置を要求する国会内外の運動が始 まっている。

 英国政府は英国軍による占領中の市民虐待・拷問の被害者205人に総額約20億円の賠償金を支払った。さらに700人以上 が新たに訴訟に立ち上がっている。戦争被害者は英国軍の戦争犯罪を明らかにする新たな検証委員会を要求している。米国では、アブグレイブ刑務所の市民虐待 の張本人である民間軍事会社がイラク人被害者71人に約5億円の賠償金を支払っている。

 日本政府・外務省による戦争責任の回避を許して はならない。イラク戦争支持と自衛隊派兵の直接の実行者である自公政権・安倍内閣に対して、イラク戦争検証委員会の設置と侵略戦争責任を明確にする検証を 要求しなければならない。石油をはじめとした占領の「戦果」獲得に奔走するグローバル資本に対して、イラク資源の略奪を許さないとの声を上げていかなけれ ばならない。

 イラク・バスラ石油労働者連帯ツアーを成功させ、イラク市民・石油労働者と連帯して闘いを進めよう。


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