2013年04月19日発行 1277号

【みる…よむ…サナテレビ261 2013年4月6日配信 イラク平和テレビ局in Japan 政府が見放した文化の中心地 ―アル・ラシード通りの今】

 2013年1月13日、SANAテレビはバグダッドの中心地にあるアル・ラ シード通りを取材した。

 アル・ラシード通りはバグダッドで最も古く重要な通りの一つ。格式高い様式美の歴史を感じさせる立派な建物が 並んでいる。

 映像の初めに映し出されるモルガン・ホテルは「預言者ムハンマドの聖遷後76年創業」つまり西暦698年にで きたという掲示がある。日本でいえば奈良時代よりも前のものだ。

 ところが、そんな建物のバルコニーや壁がひどく損傷している。なぜか。これこそ米軍による占領の結果だ。 2003年からの占領の下で、バグダッドの博物館などが略奪・破壊され、人類の財産というべき貴重な文化財が失 われた。

 占領が終わっても、マリキ政権は建物の補修も保存もろくにしていない。インタビューに答える人たちは「大きな コンクリートのかたまりが放置され、治安もひどくなっています。大勢の露天商がここぞとばかりに歩道で物売りを 始めたのです」と、通りの状況が悪化していることを心配する。

 「歴史的景観をきちんと守ることは、何千年もの間に北から南まで広がったイラク人の歴史的アイデンティティの 下に、同じ目的で人々を団結させる唯一の道」と訴える人もいる。

闘いの歴史を想起

 映像の終盤、この通りにある「愛国的指導者アブドルカリーム・カーシム広場」という看板とカーシムの銅像が映 し出される。王政時代のイラクは中東における米国、英国の同盟国で反共産主義の防波堤を自負していた。カーシム は1959年、王制を打倒しイラク共和国を樹立した革命の指導者だ。

 それから半世紀が過ぎ、米国、英国、日本などがイラクを占領。占領が終わっても腐敗したマリキ政権を ODA(政府開発援助)などで支え、石油利権の略奪を続けている。

 今回の映像は、イラクの歴史的な文化遺産の現状を示すと共に、帝国主義の支配に立ち向かってきた闘いの歴史を 思い起こさせようとしている。

 このようなイラク市民の闘いに連帯し、日本でイラク戦争検証委員会の設置を実現し、戦争責任を明らかにして謝 罪と補償を実行させなければならない。

(イラク平和テレビ局 in Japan代表・森文洋)


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