2013年10月04日発行 1299号

【シリア内戦をやめろ 「1%」がウソではじめる侵略戦争/止めるのは戦争の真相暴く検証運動】

 シリア空爆強行は回避されたが、戦闘は今も続いている。国連では「アサド政権 への懲罰」を巡り、各国政府の駆け引きが行われている。シリア内戦はマスコミの言う「米ロ代理戦争」でもなけれ ば「悪者を懲らしめる」話でもない。利益を手にするグローバル資本=「1%」の連中が「99%」の人々の命や生 活を奪っているのである。戦争そのものをやめさせねばならない。戦争の口実として重ねられたウソを暴き、戦争の 正当化を一切許さない運動を進めよう。

化学兵器廃棄を

 シリアの化学兵器使用の有無を調査した国連調査団は9月15日、潘基文(パンギムン)事務総長に報告書を提出 した。報告書は、化学兵器が使用された事実を示したが、誰が使ったかは明らかにしなかった。焦点は化学兵器廃棄 の米ロ合意を基にした安全保障理事会決議に移った。

 化学兵器を使用したのはアサド政権だと主張する米・英・仏政府は、シリアが米ロ合意に従わなかった場合、国連 憲章第7章に基づく軍事制裁を行うことを決議に含めることを主張している。反政府武装勢力が使用した可能性があ るとするロシア政府は、合意に反した場合はあらためて制裁決議をすべきと応じている。

  シリア政府は9月21日、所持する化学兵器のリストを提出した。14日の米ロ合意で1週間以内とされた期限を守った。廃棄は来年前半までが期限だ。守られ ねば軍事制裁を辞さないと米政府は威嚇するが、化学兵器禁止条約の定めた期限内に廃棄をしていないのは、他なら ぬ米ロ両政府である。

 シリアに限らず、地上から化学兵器をなくす必要がある。化学兵器を保持しながら禁止条約にも加盟していないイ スラエルに対しては、何の圧力もかけてはいない。日本も自衛隊がサリンを製造し続けているし、中国大陸に放置し た化学兵器の処理は禁止条約の期限内に終わらず、今も続いている。

 約束を守らなければ軍事制裁という主張がいかに身勝手なものであるかがわかる。

でっち上げ報道

 戦争屋がすることはウソをつき通して戦争を正当化することだ。

 2001年のアフガン戦争、03年のイラク戦争はウソで始められた戦争だった。きっかけとなった9・11事件 の真相は明らかになっていない。

 イラク戦争開始の前には大量破壊兵器とテロ組織アルカイダ、サダム・フセイン政権を結びつける情報操作が繰り 返された。マスコミを使い「サダムは自国民に化学兵器を使う残忍な悪人」との雰囲気を作り出していった。開戦後 は戦場の残虐さを報道させないよう、軍の統制に従うことを条件に取材を許可した。マスコミは侵略軍とともに行動 し、犠牲となる人びとの姿を映像にはしなかった。

 今回のシリアでは、アサド政権の残忍さが強調され、「軍事制裁やむなし」の世論誘導が企てられた。だが、情報 源はほとんど反政府勢力側かネットで信憑性が問われ、情報操作は思惑通りにはならなかった。

 イラク戦争で米軍の蛮行を暴く役割を果たしたアラブの衛星放送局アルジャジーラがシリアではでっち上げ番組を 流していることが暴露された。「バシャール(大統領)に神の鉄槌がくだされますように」と顔面を包帯で覆った少 年に記者が演技をつけている映像が社内から漏れた。戦闘現場を見てもいない「現地証人」に実況報告させ、銃撃音 などを加え臨場感を出すことも行われている。国枝昌樹元シリア大使によれば、偏向した報道のあり方に抗議をし、 辞職する記者が相次いでいるという(『シリア―アサド政権の40年史』平凡社新書)。

 アルジャジーラのスポンサーは親米カタール政府である。いまやマスコミが資本や国家から独立した自由な批判的 報道をすることは不可能となっている。戦争の口実を厳しく検証する必要がある。

検証運動の成果

 オバマに空爆を断念させた大きな力は、英国議会に賛成決議をあげさせなかったイラク戦争検証の闘いだった。

 英国では09年に、イラク戦争に関する独立調査委員会が設置された。委員会は政府の内部文書などを調査すると ともに、当時の首相ブレアをはじめ外相、法務長官らを公開公聴会の場で喚問した。その結果「サダムが大量破壊兵 器を保持している」とニセ情報を開戦根拠にしたことや1年以上前に米大統領ブッシュと参戦の密約を結んでいたこ となどが浮かび上がってきた。

 公聴会で証言するブレアの姿はリアルタイムで放映され、人々は開戦理由がウソだったことを確信した。この検証 運動の成果が、シリアへの空爆を許さない世論を作り出したのは間違いない。当時の外相で喚問を受けたジャック・ ストロー下院議員は「与党・保守党議員から多くの反対が出たのは、イラク(での失敗)が影を落としたためだ」と 語った(9/21毎日)。

 日本では、自衛隊のイラク駐留を延長する特措法改正に際し、イラク戦争を支持した当時の政府の判断について検 証するよう付帯決議がなされている。ところが、外務省がわずか4ページの調査概要を公表しただけで、国会決議は たなざらしとなっている。

 2度と戦争をさせないためにも、政府にウソをつかせない力を定着させる必要がある。

  米ロ両政府が代弁するのは「1%」の利益だ。「1%」の連中の利害対立、金儲けのために「99%」の人々の血が流されるのだ。戦争を煽った者には必ずその 責任を取らせなければならない。


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