2013年10月18日発行 1301号

【高松勇医師(医問研)が各地で講演 甲状腺がん異常多発は明らか 放射能健康診断の拡充を】

  「福島の子どもの甲状腺がん43例は、アウトブレイク(異常多発)だ」―高 松勇小児科医(医療問題研究会)は各地で訴えている。福島県と国は放射能汚染と健康被害の関連をもみ消そうとす る。しかし多発の事実は、今後さまざまな健康障害が生じることを示し、健康診断の強化、被曝低減対策が急がれ る。

 9月23日、東京・荒川区で開かれた講演会には約50人が参加した。

低線量被曝の危険性

 高松医師は放射能汚染の実態から健康被害の広がりを危惧する。「1uあたり4万ベクレルを超える放射性物質で 汚染されたものは放射線管理区域から持ち出してはならないが、福島・関東一帯はその放射線管理区域内で日常生活 を強いられている。チェルノブイリ事故による同様の濃度の放射能汚染はロシア、ウクライナ、ベラルーシの死亡率 の4%前後を占め、総罹病率を押し上げている」

 アウトブレイクは明らかだ。「甲状腺がんは小児にはほとんど見られないが、15歳から19歳では全国発生率は 100万人に5人(20万人に1人)となる。がんとわかってから治癒か死亡して収束するまでの期間(平均有病期 間)を2年とすると、2年間では10万人に1人。福島の調査対象は0歳から18歳で、11年度4万1296人中 13例が発見されたのだから、31倍もの発生率となる(13÷4万1296×10万=31・48)」

 低線量被曝が健康に及ぼす被害について「11年のがん13例は浜通り、12年の30例は中通りの検査結果。相 対的に線量が低いとされる中通りでも多発が始まった。浜通りで12年も実施していれば、もっと出た可能性があ る」と指摘。対策として「できれば避難。保養の積極的活用、安全な食の確保で被曝を軽減することが大切だ。予 防、早期発見のための健康診断が必要」と訴えた。

 講演会には千葉からかけつけた人や家族連れの姿も。足立区の母親からは「子どもの鼻血は放射能の影響?」「校 庭で遊ばせても大丈夫か。食事の注意は」「健康診断はどのぐらいのペースでやればよいか」などの質問があった。

「私たちも被害者」

 高松医師は「鼻血は初期被曝の可能性もあるが、花粉で粘膜が炎症することもあり、因果関係の判断は難しい。発 症率は何万人に1人だから過度に恐れることはない。校庭では放射能の低い個所で遊ばせる、食材は西の産地のもの を選ぶなどの努力が要る。有症状時は健診は年2回ぐらい必要」と説明した。

 主催したZENKO東京北部は「都内には多くの避難者がいる。ホットスポットもある。食を通した内部被曝も心 配だ。私たちも被害者。『子ども・被災者支援法』基本方針の撤回・作り直し、健康診断の実施を地域から迫ろう」 と呼びかけた。


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