2014年02月28日発行 1319号

【福島原発事故と甲状腺がん〜被曝の時代を生きるために〜/DVD作品 制作・発売マブイ・シネコープ/43分 3000円/放射線による健康被害を暴く】

 2月7日公表された福島県の県民健康管理調査結果で、小児甲状腺がんと「確定」した子どもの数は新たに7人、「疑い」が9人増え、あわせて74人となった。通常の数十倍にも及ぶ発生にも検討委員会は「放射線の影響とは考えにくい」と福島原発事故との因果関係を否定する。

 紹介するDVDは、市民のための医療をめざす医師たちの話を通して「原発事故による放射能汚染がアウトブレイク(異常多発)を引き起こした」ことを明らかにしたものだ。『低線量・内部被曝の危険性』の著書がある医療問題研究会の4人の小児科医がインタビューに答えている。

 入江紀夫さんは、100ミリシーベルト以下のいわゆる低線量被曝でも健康障害が生じることを論文をもとに指摘する。X線透視で行われる心臓カテーテル手術を受けた8万人を追跡調査した論文では、10ミリシーベルトで3%発がん率が高まることがわかった。また、内部被曝について、小児がんの発生は原発からの距離に反比例し、5キロ以内で1・6倍としたドイツ政府調査などがその危険性を示していると語る。

 山本英彦さんは、放射線が甲状腺がん以外にも白血病や乳がん、血管障害に起因する脳梗塞、心筋梗塞などの健康障害を引き起こすことを指摘する。チェルノブイリの事例では、子どもたちの持続力が奪われ、日常生活が維持できないケースも生じているという。

 ところが、現在行われている福島の健康管理調査は18歳以下を対象とした甲状腺検査のみだ。「この調査はいろんな健康障害をいち早く発見し、適切な治療を施すためのものではない。血液検査などは実施していない」と批判するのは高松勇さん。

 小児甲状腺がんのアウトブレイクを警告する高松さんは、スクリーニング(対象全員を検査しふるいわける)調査を行ったことで高い比率で発見されたとする説を批判し、02年のベラルーシでのスクリーニング調査結果を示す。調査対象はチェルノブイリ原発事故当時はまだ生まれていなかった子どもたち。事故後もっとも甲状腺がんが多発したゴメリ地区でもゼロだった。スクリーニング効果があるなら、一定の比率で発見されるはずだ。

 昨年10月に行われた公衆衛生学会でアウトブレイクとの見解を発表した林敬次さんは原発事故との関係に触れるのを避ける学会のあり方を批判し、「原発をなくさない限り被害はなくならない」と語る。海外の研究者との連携にも力を入れる必要があると考えている。

 避難者を孤立させない支援の取り組み、汚染地域から離れる時期を作る保養事業、汚染食品の流通を監視する市民測定所、どこでも誰でも放射能健康診断が受けられるよう求める署名。被曝の時代を生きぬき、すべての市民が当事者としてこうした闘いを進めるために本DVDを活用してほしい。      (T)

・問い合わせはマブイ・シネコープ
(TEL/FAX06-6786-6485)
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