2014年04月18日発行 1326号

【1327号主張/積極的平和主義という名の戦争/他国民を殺すのか】

自衛隊が地球の裏側へ

 集団的自衛権を行使すると自衛隊はどこまで行くのか。自民党の石破幹事長が繰り返し正直に語った。

 「地球の裏側まで行くことは、日本に非常に重大な影響を与える事態と評価されれば完全に排除はしない」(4/5民放番組)「(自衛隊の活動の地理的範囲を)最初から決めてしまうことが抑止力の発揮にプラスになるのか」(4/7記者会見)

 石破は「自衛官は危険を顧みないとの誓いをして任官している」とも言う。自衛官の宣誓の中に「わが国を防衛するため」の言葉があることを隠し、国土防衛と関係のない地球の裏側での戦争に命を差し出すよう求めたのだ。

グローバルな安全保障

 集団的自衛権行使に限定がないことは安倍首相自身が何度も主張している。

 昨年9月、ニューヨークでこう演説した。「日本はグローバルな安全保障の枠組みにおいて、鎖の弱い環であってはならない。脅威がボーダーレスとなった世界できちんと役割を担う。世界の福祉と安全保障に掛け値なしの貢献者となる」。これを安倍は「積極的平和主義」と名付ける。

 今年1月の世界経済フォーラム(スイス・ダボス)演説では、日本が積極的平和主義の立場で貢献した相手国としてカンボジア、フィリピン、ジブチの3つをあげた。

 カンボジアは陸上自衛隊の初の海外派遣先だ。フィリピンに台風災害救援の名目で送られた自衛隊は、護衛艦や輸送艦まで含む1180名の大部隊。次期フィリピン大使には退職したばかりの海上自衛隊幹部を起用する案が浮上している。ジブチに初の海外基地を開設した自衛隊は、海賊対策に必要とされる哨戒活動の7割を担う(残り3割を英仏など5か国が分担)。

 このように安倍の積極的平和主義とは、平和と正反対、自衛隊という軍事力を遠くアフリカまでもグローバルに展開することを指す。だが、それを「積極的(proactive=先んじて行動を起こす)平和主義」と呼ぶには一つ欠けているものがある。集団的自衛権を発動すること、すなわち海外で武力行使することだ。

人殺し国家を拒否する

 日本の軍事力がこれまで他国民殺害に手を染めなかったわけではない。

 01年12月には奄美大島沖で、海上保安庁の巡視船が国籍不明の「不審船」を射撃・沈没させ、乗組員を死に至らせた。アフガニスタン戦争では、インド洋上の日本の自衛艦が補給した油が米軍の空爆を支えた。イラクに派遣された航空自衛隊は、バグダッドなどで掃討作戦に就く武装米兵の空輸を担った。

 とはいえ、不審船事件は偶発的であり、アフガン・イラク戦争でも自衛隊は直接戦闘行動はしていない。集団的自衛権行使容認はこの限界を取り払う。イラクでは今、政府軍による攻撃で多数の民間人死者が出ている。「わが国と密接な関係にある」マリキ政権からの要請として自衛隊が再びイラクに派遣され、今度は直接イラク市民の殺戮に手を下すことになる。

 戦争の別名「積極的平和主義」に、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」=平和的生存権を大きく対置しよう。

  (4月14日)
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