2014年10月24日発行 1351号

【福島市で放射能から健康守る懇談会 「本当のこと知らされていない」 若い世代へ働きかけを】

 10月12日福島市内で、医療問題研究会の小児科医・高松勇さんを囲んで「放射能から健康を守る/医師のお話と懇談会」が開かれた。放射能健診署名実行委員会・福島が主催した。

 高松さんは「甲状腺がん103名をどうみるか」の講演で、これまで「多数のエコー検査をしたため、見つからなくてもいいがんまで見つかった」と主張してきた福島県立医大の鈴木眞一教授が8月の日本癌治療学会で「手術したのは、転移し悪性度の高いがん。過剰治療ではない」と報告していることを指摘。「被曝とは関係ない、問題のないがん」とする見解は明らかな矛盾をきたしつつある。

 福島県内からの参加者は7人。高松さんの「甲状腺がん多発は今後の多様で広範な健康被害の発生を意味する。避難、保養、食の安全確保などの被曝軽減策、放射能健診、科学的な治療が必要」とのまとめを受け、質問・意見が1時間半以上にわたり途切れることなく続いた。

 「私たちは何をすればいいのか」「孫が最近、鼻血が出ると言う。私も花粉症のような症状がある。原因は何だろう」。高松さんは「見えなくされている健康被害の現実を見えるようにすること。『若い人の葬式が多い』といった外になかなか出せない事実を公然と語り、調査し、科学的に検証していくこと」「放射線の微粒子が飛んでおり、血管や粘膜に障害を起こすことは十分あり得る」と応じる。

 健康問題に取り組む困難さも率直に語られた。「関西に避難していた。向こうの方が福島の被害がよく見える。いま周りは平穏。放射能の“ほ”の字も出ない。本当のことを知らされていない」。伊達市から参加した女性は「市の健康アドバイザーは“100ベクレルどころか1200ベクレルでも安全。日本の基準はきびしすぎる“と言う。話が交わらない。市民も楽な方を選んでしまう」と嘆いた。「こういう勉強会に来る人が減った。疲れてしまったのか」「甲状腺がんの子を持つ家族同士がつながり合えていない」という意見も。

 高松さんはこれらの声に丁寧に耳を傾けながら、「“将来子どもを生めるだろうか”と思いつめている若い世代と接点を持ち、彼らが希望を持てるような働きかけを」「適切な治療だったかを検証させること、家族へのサポートが重要」とアドバイスした。

 懇談の最後に、「データをとる。被曝手帳をつくらせる」「専門家も交えた“しゃべり場”を設ける」「同時進行で行政に働きかける」ことの大切さを確かめ合った。

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