2016年02月19日発行 1416号

【どくしょ室 日本にとって沖縄とは何か/新崎盛暉著 岩波新書 本体780円+税/「構造的差別」を克服する辺野古闘争】

 沖縄辺野古新基地建設阻止の現地闘争が続けられている。本書は「(辺野古基地建設は)単に米軍基地建設をめぐる問題ではなく、戦後70年の日米沖関係史の到達点として存在する」(はじめに)ことを著したものだ。中心軸は「構造的沖縄差別」。辺野古をともに闘う上で不可欠な視点だ。

 構造的沖縄差別は米軍の対日占領政策にはじまる。マッカーサーは「天皇制の存続・戦争放棄・沖縄の軍事支配」(三位一体の占領政策)を遂行した。沖縄軍事支配を「日本の利益にもなる」と天皇裕仁は自己保身のために歓迎した。以後、日本の再軍備、米軍による日本全土の基地化の中でも、沖縄の軍事支配は解消されることはなかった。

 本土で反戦反基地を闘う側でも「沖縄差別」は意識されなかった。60年安保条約改定に際し、日米両政府は「在日米地上軍の大幅削減」をうたった。米極東戦略の見直しに伴うものであり、本土から撤退した海兵隊などは沖縄に移駐した。本土の基地は4分の1に減り、沖縄は2倍に増えた。「日本の国外」であった在沖米軍基地はベトナム戦争の発進基地となった。沖縄の新たな役割について安保闘争は「全く関心がなかった」。立法院(沖縄議会)が行ったメースB(核弾頭搭載地対地ミサイル)持ち込み反対決議に「ヤマトのどこからもこれに呼応する声明一つ出なかった」。

 72年沖縄返還に際し、在日米軍再編統合が行われた。本土の基地が3分の1に減り、沖縄の基地はほとんど減らなかった。その結果、在日米軍基地(専用施設)の75%が集中する現状を生んだ。この時、那覇空港にいた米海軍対潜哨戒機P3を「本土ではなく、沖縄の別の基地へ」移転要請したのが福田赳夫外相(当時)であり、結局「日本政府が滑走路を整備した普天間基地で訓練を開始」することになる。「普天間固定か、辺野古建設か」の恫喝は、沖縄差別の今日的表現なのである。

 本書は、「『オール沖縄』の形成」に1章をあてて記述している。07年、11万人の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が起点となったという。安倍第1次政権は、日本軍が「集団自決」を強制したとの記述を削除させた。県民の「世代を超えた歴史体験の共有」が大抗議行動に発展し、新基地建設反対の保革共闘へと連なったことがわかる。

 2015年は安倍政権の戦争法強行に対する市民の運動が湧き起こった。全国各地から国会前に駆けつける様は、60年、70年の安保闘争を超えたともいわれる。だがその評価は、「次期国政選挙に至る過程での辺野古新基地建設阻止闘争の広がりにかかっている」と本書は指摘する。辺野古新基地阻止を安倍の改憲・戦争路線との実践的課題とすることが「構造的沖縄差別克服の第一歩」であり、「日本にとって沖縄とは何か」との問いに対する答えである。(T)
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