2016年05月27日発行 1429号

【みるよむ(398) 2016年5月14日配信 イラク平和テレビ局in Japan アメリカのイラク占領が残した傷跡】

 2016年3月、イラク戦争から13年目を迎えたバグダッドで、サナテレビは米軍の占領がどのような影響を与えたかについて市民にインタビューした。人びとは今も続く占領の傷跡に苦しみ、怒りを持ち続けている。

 2003年3月、米軍をはじめとした「有志連合」軍がイラクに侵攻し、8年半にわたって占領を続けた。100万人以上のイラク人が命を奪われた。フセイン政権崩壊後に作られた歴代政府は、大量失業を生み出し、社会サービスを切り捨てた。汚職だらけの政府は、イスラム主義勢力の対市民攻撃も防ごうとはしない。

 最初に登場する男性は「イラクで起こったすべての惨事はアメリカによって引き起こされた」と厳しく批判する。米軍はイラクの社会も産業も破壊しただけで、自ら「占領者であって解放者ではない」とうそぶいたと指摘する。「政府は3つに分けることができる。嘘つきと、泥棒と、外国の手先だ」と糾弾する。

 2人の息子がずっと政府に対する抗議行動に参加しているという女性は「米軍とそれに支えられた政府の連中が『イスラム国』を連れてきた。全員泥棒で、イラク国民のお金を盗んだ」と痛烈に米国とアバディ政権を非難する。

守られない市民の安全

 この女性が一番望むものは「安全」である。「イスラム国」の支配地域での人権破壊と大量殺人は現在も続いている。これまでに国内の複数の場所で、虐殺された犠牲者を埋めた集団埋葬地が50か所以上発見されている。米軍やイラク政府軍は無差別攻撃で多数の市民を犠牲にし、それを口実に「イスラム国」を名乗る連中が対市民自爆攻撃を引き起こしている。市民の安全はまったく守られていない。首都バグダッドでさえ、いつ爆弾攻撃の被害にあうか分からない。

 これが米国を中心として日本の自衛隊も参加した「対テロ戦争」と占領が生み出した結果なのだ。

 今、日本の安倍政権は戦争法発動=武力の行使と平和憲法の改悪を狙っている。イラク戦争の真実を明らかにする意義はこれまで以上に大きい。平和と安全、人間らしい生活を求めて立ち上がっているイラク市民と連帯したい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



 
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS