2016年05月27日発行 1429号

【パナマ文書と日本企業/新聞・テレビはだんまりだが…/あまりに不公平、巨額の税金逃れ】

 マスメディアによる最も悪質な情報操作は「報道しないこと」である。事実を「なかったこと」にしてしまうのだ。パナマ文書に関する報道でも、この手法が盛大に使われている。

 たとえば読売新聞。パナマ文書に登場する日本企業や個人名を匿名にしている。「日本の企業や一般個人がタックスヘイブンを利用していても、国内で適正に納税していれば、税法上、問題視することはできません」というのが理由だ(5/10付夕刊に掲載された「おことわり」より)。

 他のメディアもひどい。丸紅や伊藤忠商事、楽天の三木谷浩史会長兼社長らの名前が報道されているが、パナマ文書に挙がっている日本企業・関係者は本当はもっと多いのだ。

 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、パナマ文書と以前に流出した税逃れ企業リストを統合したデータベースをネット上で公開している。これを「JAPAN」ではなく「ALL COUNTRIES」の分類で検索してみるといい。三菱商事、日商岩井、東京電力、住友金属、大和証券、日興証券、オリックス、ソフトバンク、電通といった有名企業が続々と出てくる。

 これらはタックスヘイブンを利用して不正蓄財に励んでいる連中の一部にすぎない。では、誰がどれくらいの規模の税金逃れを行っているのか。残念ながら全容は明らかになっていないが、一端を推し測ることができるデータはある。

 タックスヘイブンで有名な英領ケイマン諸島に対する日本の投資残高は2014年末で65兆6583億円。残高=利益と捉えれば、ケイマン諸島分だけで65兆円もの租税回避が行われている疑いがある。今の法人税率が適用されれば約15兆円もの税収になる計算だ。

 個別の事例で言うと、ユニクロの柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は、保有する株式を低税率国に移転する手口で年約7億円の税逃れをしている(5/9しんぶん赤旗)。

 そもそも、タックスヘイブン以前の問題として日本の税制は巨大企業に甘すぎる。諸外国に比べて日本の法人税は高いかのようなイメージがあるが、これはウソだ。実際の納税額を見ると驚きの事実が浮かび上がっている。

 たとえばソフトバンク。2013年3月期に実際に払った法人税はたった500万円。税引き前純利益が788億8500万円なので、実効税負担率は0・006%ということになる。三井住友フィナンシャルグループはその上を行く。払った法人税は300万円。実効税負担率は0・002%にしかならない(富岡幸雄著『税金を払わない巨大企業』/文春新書より)。

 消費税率1%は税収2兆円に相当すると言われる。安倍晋三首相は消費税率引き上げ再延期を手柄に参院選になだれ込みたいようだが、「アホか」と言いたい。巨大企業に応分の税金をちゃんと負担させれば、消費税を上げる必要など最初からないのである。 (O)

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