2016年06月24日発行 1433号

【韓国総選挙/与党敗北に追い込んだ青年ネットワーク(上)/「変化に投票しよう」】

 韓国総選挙(4月13日投開票1院制、定数300)で与党セヌリ党は予想外の敗北、過半数割れした。要因は20代、30代の投票率アップにあった(図)。この変化をつくりだしたのが2016総選挙青年ネットワークの活動だ。主要メンバーであるミンタルペンイ(ナメクジ)・ユニオン(注)委員長イム・キョンジさんが、5月29日大阪市内で行われたZENKO実行委員会の場で報告した。その内容を紹介する。(まとめは編集部)


若者組織が結集

 最近、韓国では若者たちによる自発的な組織結成が増えている。私が委員長をしている住宅問題を扱うミンタルペンイ・ユニオンや青年ユニオン。ソウル大学や延世大学の学生会、青年政策の研究組織や、若者・市民のための教育機関など、こうした大小さまざまな団体20以上が集まって、2月に初会合をもち、総選挙まで約50日間の活動を展開した。活動は主に3点。各政党の公認過程にコミットし、政策を提案し、投票を呼び掛けることをした。

 若者たちは「ヘル(地獄)朝鮮」と自嘲的に使う。経済的弱者である若者の生きにくさを「地獄のような朝鮮」と表現している。彼らにはもちろん怒りはあるが、どちらかと言えば選挙に対しては無気力になっている。期待感など何もないところから始めなければならなかった。選挙でパク・クネ大統領に審判を下そうと訴えることも大事ではあったが、変化の主体は青年であることを強調し「変化に投票しよう」をスローガンにした。

 何をしたか。まず、特定の候補者の「公認不可」とプラカードを掲げ、1人デモ。最賃引き上げ反対論者や採用不正などを働いた議員・候補者14人を対象にし、4人を落選させた。落選運動は違法行為とされているので、警察の取り調べを受けている。

 政策討論会を開いた。20数個の団体が集まり、多様な12の政策要求をつくった。ネット上で要求を示し、設問調査、アンケートを行い練り上げた。上から下におろすのではなく、みんなから意見を受け、修正しながら作っていった。今の青年にとって、小さなことでもともにつくること、それが投票率のアップにつながる。


民主主義実現の過程

 政策討論会では自分たちの要求を示し、各政党の政策を比較検証した。後半は、候補者との質疑応答。この場にセヌリ党は来なかった。私たちの要求をセヌリ党にも送ったが、自党の公約を送りつけてきただけだった。要求への回答を拒否したために、若者の反感を買った。こうした過程を公開することも大事だ。この過程そのものが民主主義を守る過程だとわかるからだ。セヌリ党は労働契約を改善するとは言う。しかし若者たちの要求に賛否の意見をよこさないのが今のセヌリ党の姿勢だということを認識することができた。

 選挙期間中にも記者会見を行った。比例代表の候補で、若者政策を軽視したり、若者候補者を名簿の上位にあげないなど、政治の場に若者を押しだすには困難が多い。若者を無視するこうした態度を糾弾し、若者に変化を起こしていこうと呼びかけた。政党は若者に無関心であり、考慮していないことを明らかにしなければならないと思った。このまま投票率も上がらないのではないかと心配した。

 選択肢が多くなればなるほど若者たちは投票に関心を示す。選びたい候補もいないのに投票所に行くことは困難だ。その意味で「変化に投票しよう」というスローガンは、とても状況に合っていると思った。公認を立てる、大小の懇談会、討論会を持つ、記者会見をする、こうしたことを1か月の間に行った。

 投票10日前のフラッシュ・モブ≠ヘこうだ。あちこちのブース10か所でキャンペーンをし、時間を合わせ、一斉に踊りだした。事前に組織した人の数は200人ぐらいだが、それ以外にたくさんの若者が参加してくれた。よく頑張ったなと思う。10個のブースは、政治的なものだけでなく、セウォル号遺族救済のキャンペーンなども行い、他の世代に対するアピールもした。

(続く)

(注)ミンタルペンイ(韓国語でナメクジの意)・ユニオン。大学、就職後の若者にとって最大の悩みが住宅問題。「カタツムリでも入るところがある」と2011年結成。情報共有、生活支援、低家賃住居の提供もしている。(出典:ウィークリー共感)
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