2016年06月24日発行 1433号

【自治体まるごと民間委託を考える学習集会/メリットなく市民生活を脅かす/公的責任放棄は戦争国家への道】

 大阪・枚方(ひらかた)市議の手塚たかひろさんと京都・向日(むこう)市議の杉谷伸夫さんの呼びかけで「自治体まるごと民間委託を考える学習集会」が5月29日、大阪市内で開かれた。自治体まるごと民間委託は、公的責任を放棄し自治体の解体を招き戦争国家を支えるものだ。地域住民の人権を守るため、実態を暴露し反対していくことが必要だ。

人権の問題

 基調報告では、中川哲也さん(集会事務局)が、安倍政権が骨太方針で「公的サービスの産業化」と称して50兆円市場を狙い自治体まるごと民間委託を推進していると指摘。以下のように批判した。

 ―自治体の民間委託は、1980年代の業務の一部民間委託から、窓口業務のまるごと民間委託、国民健康保険や会計、税などの専門定型業務に広がっている。その突破口が東の東京都足立区、西では大阪市。強力に推進しているのが安倍政権だ。

 2020年までに窓口業務の民間委託自治体を倍増させるとし、そのために、政府が公権力行使取り扱いの詳細を定めて偽装請負を伝授し、民間委託業務マニュアルと仕様書を作成。さらに参入企業に採算が取れるよう小規模自治体の共同化を促すとともに、民間委託を推進させた自治体に地方交付税を優先配分する制度を創設。これらは自治体業務を全国統一規格化することで産業化への道筋をつけることになり、今後全国の自治体に押し付けられていく。

 民間委託問題は役所の機構問題として捉えられがちだが、地域の人権の問題だ。受付・相談から決定までの一連の自治体業務が規格化されすべて民間委託されることは、自治体が公的責任を放棄し、本来、憲法に基づく市民の権利を実現すべき地方政府たる自治体の解体につながり、戦争国家の内実をつくるものだ―。

「できないこと」も民間に

 民間委託最先端の現場、足立区から区議の土屋のり子さんが特別報告。足立区は「委託先進自治体」で、2012年に政府や企業とともに「日本公共サービス研究会」を設立し「民間にできないことを民間にできるようにする」を旗印に専門定型業務委託を推進している。すでに戸籍窓口業務(2014年度〜)、介護保険業務(同)、国民健康保険業務・会計管理業務(2016年度〜)を委託し、保健所窓口運営業務も2017年度に予定されている。また区当局は保育園も民営化を進めており、保育士は8年間採用せず、実際に保育士の定数割れが生じているのに「民営化するのに採用するのはムダ」(議会答弁)と市民生活を無視し居直る始末だ。民営化は、資本に儲けの対象を提供し、雇用を破壊し非正規を増やすもので許されない、と実態を告発し批判した。

 続いての報告は、関西で民間委託を最も強力に推進しているおおさか維新市政の区役所窓口職場だ。住民票・戸籍等の証明書発行業務は全24区で、国民健康保険等の納付以外の業務は2区(淀川、東淀川)で実施されている。しかし、市にとって経費的にも削減されたといえず、自治体に業務のノウハウの蓄積がされない。委託業務のチェックすらできなくなり、公共サービスの劣化を生じさせ、市民にとってもメリットはないと報告があった。

市民と議員、労働者で反撃

 自治体業務のほとんどを資本に提供するまるごと民営化は、公共サービスを劣化させるだけでなく、格差社会を拡大し女性の社会進出を阻み、市民生活や人権を切り縮める。実は市民生活に直結する問題なのだ。

 集会では、自治体の民間委託が市民生活を脅かしている実態をさらに調査し、市民と議員、自治体労働者が一体となって反対していくこと、2016ZENKOin大阪の自治体民間委託反対分野別討議への参加が呼びかけられた。
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2016ZENKOin大阪 分野別討議「自治体まるごと民間委託を許さず、人権尊重する地域を」
7月31日(日)9時30分〜 エルおおさか 視聴覚室
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