2016年06月24日発行 1433号

【原発避難者への住宅提供を打ち切らないで/キビタキの会が東京都と交渉】

 東京都内では5526人の福島原発事故避難者が生活している。区域外避難者は約1400人で、うち1100人が都営住宅・国家公務員宿舎に暮らす。避難者でつくるキビタキの会は6月7日、東京都(都市整備局住宅政策推進部)と交渉し、住宅提供を打ち切ることなく、来年4月以降も現在の住まいに住み続けられるようにするなどの支援策の抜本的見直しを求めた。住宅担当の4人の課長が出席した。

 5月17日から6月いっぱい、福島県と東京都により、今後の生活の意向調査のためとして戸別訪問が実施されている。これに対する批判が集中した。「来年3月の追い出しの通告に来たのか」「面談後、体調を崩した人がいる実態を知っているか」。避難先にとどまろうとする避難者に、生活再建を保障する施策を提示しないまま来年3月までに引っ越し先を探すよう促す面談になっているからだ。

 「戸別訪問は役に立つどころか避難者にはプレッシャーで、迷惑。実質上の帰還強要だ。そのことを認識せよ」との追及に、都側は「帰還を押しつけるつもりはない。プレッシャーに感じておられるなら、心苦しい。今後注意したい」。批判の多い戸別訪問であるとの認識を共有させた。

 都営住宅に応募しても大多数は抽選に外れる。収入要件を満たせず、応募資格すらない世帯もある。2年間の家賃補助という福島県の支援策では「生活再建」のめどは立たず、収入要件からそうした支援策自体に当てはまらない人びとがいる。

 参加した避難者からは「都営入居の優先策にも県の支援策にも該当しない。路頭に迷うしかない。原発事故の責任をとってほしい」「このままだと、ほとんどの人が来年4月路頭に迷うのは見え見え。そう認識しているか」と怒りが続く。「職員の対応は冷たい。家をなくしてどうやって生きていったらいいのか、心にとめて対応してください」と声を振り絞る人も。役に立たない支援策にいら立ちは募るばかりだ。都側は「退去していただきたいが、退去できないという方にどう対応するかは今の時点で決まっていない」と答えるのが精いっぱいだった。

 他の自治体の行う施策に云々(うんぬん)することはできないと繰り返す都だが、「(支援策に該当しない人が多いとの)意見があることは福島県に伝えていきたい」と約束した。

 抜本的な支援策の見直し、都独自の支援策確立の要求には、「各人の所得状態など全体を把握するため個別面談をしている。6月いっぱい訪問を続け、その後どう対応するか検討する」と答えた。新たな支援策を「出す」とは言わなかったが、「検討する」とは明言した。

 キビタキの会は今後も東京都と粘り強く交渉していく。

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