2016年06月24日発行 1433号

【みる…よむ…サナテレビ(402)/2016年6月11日配信 イラク平和テレビ局in Japan/仮装パーティーにも締めつけが/個人の自由を脅かす宗教支配】

 2016年4月、サナテレビはバグダッドで、大学生が仮装パーティーをすることについて学生や教員にインタビューした。この映像では、イラクの大学の現状の一端を知ることができる。その一つは、大学生が卒業祝いの仮装パーティーをする習慣があることだ。欧米の有名な映画の登場人物などに似せた男女学生の仮装はなかなか凝った本格的なものだ。なんだかほほえましい感じがする。

 ところが、そんなささやかな学生の行事に対して、イスラム教の聖職者が「学生の間に不道徳を広げている」と悪罵を投げつけて若者を非難している。宗教支配がこんな個人の表現の自由に対しても攻撃をかけてきている。

 ある大学教員は「仮装パーティーには何の問題もない」と当然のように答える。「イスラム教の聖職者はいつも自分勝手な意見を言う」と断言する。1970年代に大学を卒業したというもう一人の大学教員も「仮装パーティーは、ある喜びを表現する個人の自由の一部」と明快に主張する。

 では、当事者である学生たちはどのように考えているのだろうか。「すばらしい日で、人生の中で一度しかやってこない日だ」と主張する学生、「聖職者には学生の生活に介入する権利はない」と批判する学生がいる。

 たいしたカネがかかるわけでもない仮装パーティーにカネを使うなという非難に、「宗教支配を市民に押しつけるハシド・シャービー(シーア派の私兵組織)と同じだ」と反論する学生もいる。

 仮装パーティーへの非難はイスラム主義宗教支配と一体であることを見抜いているのだ。

 イラク政府は、失業の増加や社会保障の切り捨てに対する市民の不満をイスラム主義の宗教支配を強めることで抑えようとしている。大学生の仮装パーティーに対する攻撃もその一環だ。しかし、学生や教員は個人の自由の侵害にきっぱりと反論している。

 日本の安倍政権も憲法改悪をはじめとして市民の権利を奪おうとしている。個人の自由と権利を守ろうと声を上げるイラクの市民と連帯したい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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