2016年07月29日発行 1438号

【バングラデシュテロ事件/市民を危険にさらすアベODAと対テロ戦争】

 バングラデシュの首都ダッカで7月1日夜に起こったテロ事件。日本人7人を含む20人が犠牲となった。安倍晋三首相はバングラデシュのハシナ首相と電話会談し「このような非道な行為はいかなる理由でも許されず、わが国は断固として非難する」と「連帯と支援」を表明した。

 テロ行為はどんなものでも、許してはならない。だが、今回の事件はアベノミクスと「積極的平和主義」が引き起こしたものであり、アベ政治による犠牲者なのだ。

日本人はターゲット

 「日本人だ」と英語で叫び、「撃たないでくれ」と訴えていた―襲撃されたレストランの隣に住む男性の証言が伝えられている。事件翌日、「バングラデシュのイスラム国(IS)」は犯行声明を出し「十字軍(対IS有志連合)参加国の市民を標的にした」と表明した。ISが実行グループなのかは不明だが、この声明を否定するものは出ていない。実行犯は「外国人を狙った」と語っており、日本人は例外ではなかった。

 日本は対IS有志連合の一員だ。2015年1月、ISに湯川遥菜(はるな)さん、後藤健二さんが拘束されている最中に中東歴訪した安倍は、ISと闘う周辺国に総額2億ドルの支援を申し出、「対テロ戦争」をけしかけた。その結果、ISは2人の命を奪い「アベよ、勝ち目のない戦いに参加するというおまえの無謀な決断でこのナイフは健二だけでなく、お前の国の国民を殺す。日本の悪夢の始まりだ」と日本人をテロのターゲットとすると宣言している。

 これが現実のものとなってしまった。安倍の「積極的平和主義」が招いた悲劇である。

投資と派兵は一体

 犠牲となった日本人は、ODA(政府開発援助)の実施機関JICA(国際協力機構)が発注した現地のインフラ調査業務に当たる建設コンサルタント会社の職員だった。バングラデシュは、人件費が高騰する中国以外の投資先として、日本企業の進出が急増している。ユニクロをはじめ240社、約1千人の日本人が暮らす。輸出入額は5年で2倍以上に拡大した(7/3毎日)。



 インフラ輸出はアベノミクス3本の矢の「成長戦略」の一つ。ODAによるインフラ整備は援助国民衆のためではなく、進出企業のための産業基盤整備であり、ゼネコンの市場づくりなのである。

 国益を掲げるODA戦略は、「積極的平和主義」=集団的自衛権行使と表裏一体である。対外投資を守るために軍隊を派遣する。安倍が描く「普通の国」の姿だ。安倍がハシナ首相にテロ非難だけでなく連帯と支援を表明したのも、バングラデシュへの援助国第1位として影響力を維持するためだ。現地に派遣された木原誠二副外相は「過激主義と戦うバングラデシュ政府を最大限支援する」と安倍の意向を伝えた。

 JICA理事長の北岡伸一は、前任の田中明彦とともに集団的自衛権行使容認の解釈改憲を推し進めた「安保法制懇」メンバーであった。イラク戦争時は両人とも武力行使=侵略を支持し、孤立する米国、日本政府を後押ししている。まさしく、投資と軍事の一体化を象徴している。

戦争国家へ加速

 世界の至るところに海外投資を拡大している日本企業。いつどこでテロの対象となってもおかしくない。

 だが、安倍は「国益」は守っても、国民の生命を守るつもりなどない。後藤さんらを見殺しにしたように、現在イスラム主義テロ集団に拘束されている安田純平さんの救出に何の手だてもとっていない。「助けてください。これが最後のチャンスです」とのメッセージボードを持った映像が5月29日、ネットに流れた。その1か月後、仲介役を名乗ってきたシリア人が交渉から手を引くと表明した。日本政府から何のアプローチもないからだと言う。

 安倍は後藤さん殺害時のIS声明に「これから先、指一本触れさせない決意と覚悟でことに当たる」と大見えを切ったが、やったことは特定秘密保護法、戦争法の強行。「日米同盟が機能し、日本が攻撃される可能性は一層なくなる」と抑止力を強調した。現実は全く逆だ。アベノミクスと戦争法は日本人のリスクをますます高めたのである。

 あらゆるテロをやめろ。戦争法廃止、9条改憲阻止、安倍打倒。市民が世界に向けて発信しなければならない。
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS