2016年07月29日発行 1438号

【沖縄 参院選直後に高江で工事 ヘリパッド建設を許すな 高江も辺野古も一つの闘い】

 7月10日、参院選沖縄選挙区で無所属新人の「オール沖縄」伊波洋一さんが初当選した。辺野古新基地反対の民意が最後のとどめをさすように10万票以上の大差で勝利した。その翌朝、安倍政権はまたしても沖縄に牙をむいて襲いかかった。自民党現職・沖縄担当大臣の島尻安伊子が完敗した復讐のようにも感じられる。伊波当選の歓喜は10時間後に激しい怒りに変わった。

市民排除し機材搬入強行

 11日早朝6時、沖縄県東村と国頭(くにがみ)村にまたがる米軍北部訓練場(通称、ジャングル戦闘訓練センター)のヘリパッド(軍用ヘリコプター離発着陸帯)建設のために、機動隊員約100人と民間警備員20人が配備され、重機、プレハブ住宅の資材、簡易トイレなどを大型トレーラー10台がメインゲートから搬入した。

 米軍北部訓練場は、名護市辺野古の東海岸から車で約1時間30分、国道331号線から県道70号線を北上した所にある。沖縄本島北部山原(やんばる)のイタジィなどの樹木が生い茂り、ブロッコリーの森≠フように見える静かな森林地帯だ。

  

 日米両政府は、1996年のSACO(沖縄に関する日米行動委員会)合意に基づき、北部訓練場を一部返還するかわりに新しいヘリパッドを東村高江集落付近に6か所建設する計画だ。だが、辺野古新基地建設計画と同様、代替施設とは名ばかりの最新の訓練施設を新たに造るものだ。

 すでに完成した2か所のヘリパッドには昼夜を問わず垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが飛び続けている。高江の集落の上をオスプレイが飛来するシーンを映画『標的の村』(三上智恵監督)でご覧になった方も多いと思う。最近では、深夜までオスプレイが飛び続けるため、爆音で寝付けない子どもたちが翌日体調不良で学校を休む問題が村教育委員会、村議会でも取り上げられている。

 高江のヘリパッド建設と辺野古新基地建設は同じ問題であり、米軍の訓練はこの2つの施設の併用を想定している。高江と辺野古をセットでとらえ、辺野古新基地建設とともに高江ヘリパッド建設に反対しなければならない。

 現在、和解勧告で辺野古新基地建設のボーリング調査は止まっているが、隙間を狙うように参院選翌日に沖縄防衛局は高江にやってきた。

 最初に着手したのは、メインゲート周辺で市民らが集会などで使っていた空き地を鉄柵で囲う作業だった。鉄柵を撤去しようとする市民らと県警機動隊は何度ももみ合い、座り込む市民を次々とごぼう抜き。現場は緊迫した。集まった約60人の市民は「県道を囲い込むのは不正使用だ」と抗議。沖縄防衛局は「県への設置許可などは必要ない」と県条例さえ無視する構えだ。

 さらに、新しいヘリパッドを建設するために7月下旬にも国頭村安波地区に工事に着手することがわかった。連休明けの19日には、市民の抗議活動に対応するため、警視庁など全国の都道府県から1千人の機動隊を沖縄に順次派遣する。人口150人の高江に辺野古シュワブゲート前の10倍の規模だ。どこが沖縄の声を聞く≠ニ言う真摯な態度なのか。

 翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事は、11日の緊急会見で怒りをあらわにした。「これが国のやり方なのか。到底容認できない。戦後70年間、日本の安全保障を背負ってきた県民に対して、こういうやり方でやるのか」。これまで遅い時間帯には県庁1階で立ったまま行ってきた会見を、この日は午後9時45分から6階の知事室のあるフロアで報道陣に対応した。参院選の翌朝の工事強行という暴挙に「用意周到に、この日を待っていたということが見え見えだ」「これから協議していく中で、話し合いの前提条件が崩れる」と政府の姿勢を厳しく批判した。

協議無視し国が県を提訴へ

 7月14日、辺野古代執行裁判の和解に基づく第2回「作業部会」協議が行われた。県は、国地方係争処理委員会の判断を受け入れ、国を提訴せずに協議を進めていくことを伝えた。しかし、国は、地方自治法が定める最終期限7月21日の翌日には県を「不作為の違法確認訴訟」で提訴するとともに、辺野古のキャンプ・シュワブ内の陸上工事を再開することも明らかにした。裁判所からの話し合い協議による「円満解決」のテーブルを国がひっくり返すものだ。

 11日からの北部訓練場ヘリパッド建設工事と辺野古陸上工事再開。国は市民運動の分断作戦に入った。SACO合意による北部訓練施設の一部返還について、これまで県は工事強行は容認しなかったが、明確なヘリパッド建設反対の立場をとっていなかった。

 高江住民は13日、「ヘリパッド建設阻止へ知事も県議会も県政方針として掲げてほしい」と訴え、県民に座り込みの呼びかけを行った。ヘリパッド建設計画の環境影響評価(アセスメント)には、オスプレイ運用も記載されていなかった。オスプレイ配備撤回を求めてきた翁長知事がヘリパッド建設阻止も辺野古阻止とともに表明することを県民は期待している。  (N)



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