2016年08月19・26日発行 1441号

【原発輸出反対国際連帯シンポジウム 日印原子力協定の阻止へ】

 第3回原発輸出反対国際連帯シンポジウム(主催 戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション〈コアネット〉)は7月31日、16ZENKO分野別討議の一つとして開催された。

 シンポジウムに先立ちコアネット事務局が基調報告。(1)原発メーカーは、経営危機に瀕しており、起死回生の方策として政府を挙げての輸出攻勢をかけている(2)日本では「インフラシステム輸出」として原発輸出が位置づけられており、公的資金を使っての受注、建設が狙われている(3)主たる戦場がインドであり、今年行われた仏印、米印首脳会談では、東芝―ウェスチングハウス(米)、三菱―アレバ(仏)による原発の17年中「契約締結」「工事着工」が発表された―など原発輸出を加速しようとする動きが強調された。

戦略ODAの問題点

 シンポジウムでは、最初、ii正明岐阜女子大南アジア研究センター客員教授がバングラデシュ・ダッカ事件について言及した。

 「5年間5千億円の借款など、日本は『開発協力大綱』による『国益重視』のODA(政府開発援助)をバングラデシュに投入。『要請型』ではない『日本提案型プロジェクト』ではこれまでJICA(国際協力機構)が行っていた仕事を下請けの日本のコンサルタント会社にさせている。こうした中で起こったテロ事件であるが、実は避けることができた。バングラデシュは厳格なイスラム教国であり、『断食月(ラマダン)最後の金曜日は、飲酒する外国人が狙われる』ことがあるので外務省も注意喚起を出していた。大企業などはそれを知っていたが、中小のコンサルから中短期の派遣で来た人が犠牲になった」と述べ、会場からの質問に答える形で討議。「開発協力大綱」策定後の戦略ODAの深化について理解を深めた。

インドで強まる民衆弾圧

 「日印原子力協定」をめぐる情勢については、ii氏、インドのCNDP(核廃絶と平和のための連合)クマール・スンダラム氏が報告した。

 スンダラム氏は「カクラパル原発やジャドゥゴダ・ウラン鉱山事故は、フクシマ事故後でも対策が実施されず、被害者に補償が無かった。インドでは反原発などあらゆる市民運動が『反国家的』とみなされ弾圧されている。モディ政権を支えるRSS(民族義勇団)は、インド全体をヒンドゥー教に染めていこうとしており、大きな政治課題も『牛を守ろう』などの掛け声によって消されている。しかし、ネルー大学の学生運動への支援拡大など市民の抵抗は続いている。反原発には厳しい情勢だが、日印市民連帯で協定を阻止しよう」と、この1年間のインドでの動きとともに、決意を語った。

 ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパンの佐藤大介氏は「日本と原子力協定を結んだトルコでもエルドアン政権の独裁強化で厳しい状況となっているが、市民の運動は続いている」と報告。

世界の反原発運動と連帯

 討議を経て決議案は補強され、「(1)インドへの原発輸出は、福島原発事故の収束もできない日本が危険な原発を輸出することの不条理だけではなく、NPT(核拡散防止条約)に加盟していないインドに対して被爆国日本が核開発、核兵器保有を容認することを意味する。今年中が焦点となる日印原子力協定の調印、批准を阻止する(2)このために、2015年11月の行動を担った団体などと共同して、今秋の国会に向けた広島、長崎を始めとする全国各地でのキャンペーン行動を成功させる(3)原発輸出への公的資金拠出に反対するとともに、『開発協力大綱』によるODA等の実態を明らかにし、政府を追及していく(4)『どこにも原発をつくらせない』ために、世界各地の原発反対運動と連帯する」と決定された。また、「日印協定阻止キャンペーン」の展開も確認された。

 全交で連帯を深めた皆さんにも、CNDPスンダラム氏を招いての交流会などの企画を呼びかけたい。

(コアネット 三ツ林安治)

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