2016年09月23日発行 1445号

【沖縄・高江/改憲先取りの市民弾圧/安倍政権は無法者】

 安倍政権は、戦争政策遂行のため、沖縄で人権無視の行為を繰り広げている。これは国連人権理事会で問いただされ、国連「表現の自由」特別報告者が調査し懸念を表明。国連との協議資格を持つ人権NGOヒューマンライツ・ナウが批判声明を出している。国内外の批判をかえりみず強行する先には、すべてを国家に従属させる改憲がある。

 安倍政権は、沖縄で法律すら無視した暴挙を繰り返している。

 際立つのは警察の暴力による市民運動の弾圧だ。

 安倍政権は自民党候補が沖縄選挙区で大差で敗れた参院選翌日の7月11日、沖縄県北部の東村高江地区でヘリパッド建設工事再開の準備作業に着手した。反対運動によって2014年から中断していた工事だ。

 この日は、沖縄県警機動隊100人が座り込む市民を強制排除した。1週間後の18日、警視庁(東京)と大阪、福岡、千葉、愛知などの県警から500人の機動隊員が派遣され、以降、機動隊による暴力がエスカレートしている。

 7月21日、警察車両の前に座り込む市民を警察官がひき逃げ。22日、警察は工事車両入口につながる県道70号を機動隊のバス2台で封鎖。座り込む住民を次々とごぼう抜きし、宣伝車に上った市民20人を引きずり降ろした。その市民らは、機動隊が殴る、蹴る、首を絞めるなどの暴行を加えたと証言。4人が救急車で搬送され、肋骨骨折・全身青あざの青年を診療した医師は「まるで拷問が行われたようだ」と語った。

 警察の暴力は老若男女を問わない。8月22日、87歳の女性は機動隊による排除の際、小指に5針縫う切り傷を負った。警察は暴行・傷害の常習犯だ。この日、機動隊は市民約40人を機動隊車両と人垣で路肩に押し込んで身動きが取れない状況にし、炎天下1時間半にわたって拘束。解放・給水の要求にも応じなかった。逮捕・監禁罪にあたる。

 しかも、機動隊の大型車両で通行止めにし、報道陣もシャットアウトした上で暴力的な排除を繰り返している。それは、イラク戦争時に米軍が街ごと封鎖し外から見えない内部で暴虐(ぼうぎゃく)の限りを尽くしたファルージャさながらだ。

工事強行の片棒担ぐ警察

 警察の違法行為は、暴力だけではない。

 度々行われる交通規制(通行止め)は本来、道の崩落など通行の危険回避などの理由が必要だ。現地では、通行車両への検問による運転免許証提示や職務質問も行われている。これも本来、飲酒運転や無免許運転の疑い、犯罪発生など相当の理由がなければならない。事実無根の不当逮捕も繰り返されている。運動参加者への脅しだ。

 また、警察は市民の自動車は運転手を乗せたままでもレッカー移動する一方で、工事業者のダンプカーは先導。工事作業員を直接警察車両で送迎することまで行っている。理由は「安全確保」とされる。非暴力でダンプの前に座り込む市民が作業員に危害を加えるわけもなく、そのような事実もない。「公正・中立」を義務付けられている警察が、防衛局・工事業者の片棒を担いでいる。

 その際、県道を逆走することもしばしば。交差点に接する位置での違法駐車も行われている。緊急車両ですら、道路交通法は守らなければならない。まして緊急性のない警察車両の道路交通法違反は許されない。

邪魔な法律は停止状態

 安倍政権による法律無視は警察の行為だけではない。

 7月22日、沖縄防衛局は市民が監視行動に使っているテント・支援物資などを何の法的手続きもとらず強制的に撤去した。テントが設置されているのは県道上であり、管理者は沖縄県だ。撤去の権限は沖縄県にあり防衛局にはない。仮に防衛局に何らかの権限があったとしても撤去するためには、裁判を経た代執行手続きが必要だ。経済産業省前の反原発運動市民団体のテント撤去は、経産省が最高裁まで争った上で裁判所による代執行が行われた。

 法的手続きを経ず撤去する行為は、財産権の否定だ。

 逆のケースもある。防衛局は、市民の行動を妨害するため、7月に米軍施設に入るゲート前の県道上に二重の金網を設置した。県からの道路占用許可をとらずに設置したため、県の指導で撤去させられた。これにも懲りず、防衛局は8月下旬、市民のテント裏にある里道(りどう)を封鎖した。里道は市町村の管理する道路で、古くから集落の住民の農道・山道として利用されていたものだ。現在は市町村が管理している。生活道路でもあり、市町村も地域住民と協議・協力しながら管理している。当然、勝手にふさぐ権限は防衛局にはない。

 県道上の私有財産の撤去、里道の封鎖は、中央政府と自治体の関係から言えば、越権行為であり地方自治の侵害だ。

 防衛局は準備工事でも問題を引き起こしている。工事用道路は国有林の中を通る。おとなの胸の高さで直径4p以上の立木の伐採は、国有財産法の規定により森林管理署(林野庁の出先機関)との事前協議が必要だが、7月に協議なしに伐採されていた。このときは、国の機関同士のため「事後協議」でごまかした。理由は「防衛局の業者に対する指示ミスであり、悪質性はない」というもの。だがその後、直径20p以上あるとみられる木も含めて広範囲に伐採されていることが明らかになった。子どもだましの協議だ。「悪質性がない」などで認められていいわけがない。

沖縄の次は全国

 安倍政権は自らの戦争政策遂行のために、辺野古・高江で暴力による市民弾圧、人権否定、報道規制をはじめとする数々の法令無視・憲法違反を重ねている。

 まさに、改憲の先取りだ。自民党改憲草案は「国民の責務」として、国民の自由及び権利は「常に公益及び公の秩序に反してはならない」とする。これは「表現の自由」「財産権」の条項にも出てくる。草案が言う「公益」とは市民の利益ではなく「国益」であり、沖縄をめぐっては日米軍事同盟を軸とする戦争政策の実現だ。また、「緊急事態条項」の新設は、内閣に法律と同等の「政令」を定める権限を与える。その適用場面は武力攻撃・内乱にとどまらず、法律で自由に決めることができる。沖縄で行われている弾圧は、現憲法下では「違法・違憲」だが、緊急事態条項下では内閣の一存で合法化できるのだ。その効力は原発推進政策や労働法解体、社会保障切り捨てなどあらゆる分野に及ぶ。

 辺野古・高江の弾圧はひとり「沖縄の問題」ではない。運動課題にかかわらず全国から連帯・共闘し、安倍の暴走を止めねばならない。
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