2016年09月23日発行 1445号

【ミリタリー 「核先制不使用」宣言を妨害 軍事大国日本の危険な姿】

挑発も緊張激化もノー

 繰り返される朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)政府の核実験やミサイル発射をやめさせるのに、最も必要なことは軍縮環境の具体化だ。朝鮮の危険な挑発行動は厳しく批判されなければならないが、同じ好戦勢力による「非難声明」や軍事的圧力、制裁には何の意味もない。むしろ、緊張激化は増大する一方となる。朝鮮の行動は米国などの核・軍事力への対抗を最大の目的としているからだ。

 緊張激化の一方の当事者である米国のオバマ大統領が核兵器の先制不使用政策を検討していることが報道された。オバマの思惑が何であれ、「核先制不使用宣言」 は核軍縮への具体的一歩として有用である。とくに、朝鮮との対話の端緒をつくる契機となる可能性があり、東北アジア全体の緊張緩和に有用な政策であることは間違いない。

 だが、この「核先制不使用」政策も「断念の模様」と報道された。「中露を勢いづかせる」「日韓などの同盟関係を損ねる」との反対意見が根強いという。反対意見を主張する代表的存在の一つが日本政府だ。米ワシントン・ポスト紙は「安倍首相は米国が『先制不使用』政策を採用すれば、北朝鮮に対する核抑止力に影響が出ると反対の考えを述べた」と伝えている。ここに、「核兵器廃絶」は口先だけで独自核武装さえ視野に入れ、オバマ政権の『核兵器のない世界』への「ささやかな一歩」さえ葬り去ろうとする軍事大国日本の悪質で危険な姿がある。

世界は核軍縮へ

 核軍縮への妨害が執拗に存在する中、これを許さない世界の動きも強まっている。

 国連欧州本部(ジュネーブ)で開かれていた核軍縮作業部会で核兵器禁止条約の交渉を来年中に開始するよう国連総会に勧告した報告書が8月19日、採択された。賛成68、反対22、棄権13という投票結果だった。同16日の作業部会では、100か国以上が来年中に核兵器禁止条約の交渉を開始すべきとの立場を表明し、条約推進が世界のすう勢であることを明確に示した。

 こうした国連での動きは昨年、メキシコなどが提出した国連総会決議(賛成138か国)に基づき、2月からジュネーブで審議されていたもの。決議は、核兵器のない世界の実現と維持のために「具体的で効果的な法的措置、法規定、規範を実質的に議論する作業部会を設置する」「作業部会は2016年にジュネーブで開き、国連総会の補助機関として総会に勧告と報告を行う」という内容だ。

 全世界的には、核不拡散条約(NPT)の「核軍縮を進める」約束が実行されないことなど、核保有国や「核抑止力」に頼る大国に任せていては核軍縮は一歩も進まない、との認識が広がっている。国連総会での動きは、国際世論を体現したものだ。

 日本政府は、ここでも「時期尚早」「投票による採択は、核軍縮を巡る国際社会の分断を一層進めることになりかねない」と棄権にまわり、事実上、報告書に反対する立場を示した。

 こうした日本の姿勢に対し、国連参加のNGOは、オバマ政権の核兵器先制不使用政策に日本や韓国が反対の意向を伝えたとの米紙報道を引用し、「核軍縮に反対している真の敵はここ(会議場)にいる」と公然と厳しく批判した。

 核軍縮への推進力は、オバマや他の核保有国のリーダーの思いつきや思惑ではなく、世界の人びとの核廃絶への熱い思いと粘り強い取り組みの中にある。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS