2016年09月23日発行 1445号

【区域外避難者住宅打ち切り反対を訴え/被害者団体が福島県交渉(上)/一人も路頭に迷わせない=^問題放置に総合的対策を要求】

 区域外避難者の住宅無償提供打ち切りが半年後に迫ってきた。一人も路頭に迷わせないと、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)、原訴連(原発被害者訴訟原告団全国連絡会)の2者共闘による福島県との第3回交渉が9月6日に行われた。東京や神奈川、山形、京都などの区域外避難者を含め約30人が、福島県が打ち出した「支援策」では多くの世帯が路頭に迷う実態を突きつけ、避難先にとどまる者への総合的な対策の必要性を訴えた。

避難先任せで問題噴出

 交渉での主な論点の第1は、公営住宅の確保が遅れ、受け入れ先都道府県での支援策に格差が生まれて、避難者への支援策とされる「優先入居」(公募、収入要件が必須)の問題点も噴出していることだ。

 支援策は民間賃貸住宅入居者などを対象としており、公営住宅入居者への住宅確保は受け入れ先自治体に任せっぱなし。このため、50戸の2年間無償提供継続(山形県)、家賃1万円上乗せ(新潟県)などに取り組む自治体がある一方、独自策を全く行わない自治体も多い。これでは、あなたは避難先が悪かった、諦めよ≠ニするのに等しい。打ち切りの激変緩和措置の体すらなしていない。

 福島県は8月17日、民間家賃補助対象の所得要件を月15万8千円以下から21万4千円以下に緩和した。そのことで対象が1200世帯から2千世帯に広がったという。ところが、その基準が各都道府県の独自支援策に適用されていない。東京都では現在、都営住宅・国家公務員宿舎入居が約350世帯ある。200戸の「優先入居」を用意しながら、収入要件を緩和していないため「空き家」が生じる事態だ。その後、都は100戸分を追加し収入要件も一部緩和した(9/10東京新聞)が、なお夫婦での避難世帯が外されるなど、条件が壁となって応募すらできない世帯がある。

 公営住宅には、公募や所得を条件としない「特定入居」規定がある。災害が原因で避難し、戻る住居がない場合の措置だ。その要件を満たしながら「優先入居」で抽選・所得審査を強いられている世帯が多くある。東京へ避難した女性は「私は借家住まいだったから、今さら戻る家はない」と訴えた。支援者は「賃貸だった人、家を解体した人、売った人、離婚した人など、帰る住居がないのだから『特定入居』として対応すべきではないのか」と追及。県生活拠点課・新妻主幹は「住居の『滅失』と考えられるので、県としても『特定入居』が一番いいとは思う。国交省も事業主体の判断で認めると全国に通知している。他県もやっていただけないか、と言っている」と答えた。

 京都に避難している女性は文書を示し「福島県は、昨年10月29日付け避難地域復興局長名で、各都道府県に公的住宅の確保を依頼している。都道府県の回答があるはずなので開示を。特定入居を追求してほしい」。支援者は「特定入居の依頼は、内堀県知事名で文章で行ってほしい」と要求。あいまいな返事ではあれ持ち帰らせた。

先行きが見通せない

 第2は、国家公務員宿舎や雇用促進住宅などに住む避難者について、先行きが見通せない点だ。

 国家公務員宿舎は「もともと賃貸住宅ではない」とされ、入居者は引っ越しを迫られている。ところが、それに替わる公的住宅は提供されない。自治体によっては「優先入居」応募対象に国家公務員宿舎入居者を入れているが、多くが引っ越し先のめどすら立っていない実態だ。

 雇用促進住宅の場合は、基本的に居住は継続、民間家賃補助の対象とされた。だが、同住宅は政府方針で民間譲渡・廃止が決まっており、現在の入居先がどうなるのか不明だ。山形への避難者は「住むのか出るのか10月中に返事しろと言われているが、迷っているので困る。期限を延ばすべきだ」と意見。新妻主幹は「雇用促進住宅は民間に売却する予定で所有権は来年3月までしかない。入居者込みで売却し、10年間程度は同一条件で住める。管理する雇用支援機構に延期の要望があることは伝える」と説明した。

 また、UR賃貸住宅は高額なため、県の家賃補助を得たとしても月10万円を超える家賃支払いが生じるケースが多く、引っ越さざるを得ない状況だ。

 山積みの問題を放置したままの提供打ち切りと追い立て。怒りの追及はおさまらない。

        《続く》

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