2016年09月23日発行 1445号

【豊かな生物多様性こわす新基地ノー 沖縄県副知事・名護市長が世界に発信 IUCN世界自然保護会議 外来種の侵入対策の勧告も SDCCが大奮闘】

 IUCN(国際自然保護連合)第6回世界自然保護会議が9月1〜10日、ハワイで開かれた。SDCC(ジュゴン保護キャンペーンセンター)は18人の参加団を送り、辺野古新基地建設に伴う環境破壊を止めるIUCNの具体的な行動を求めて8千人を超す会議参加者にアピールした。

署名は82か国から

 出発直前、うれしいニュースが飛び込む。SDCCを含む日本の6団体が提案していた動議「島しょ生態系への外来種の侵入経路管理の強化」が、事前の電子投票の賛成多数で採択されたのだ。島外から1700万m3もの埋め立て用土砂が持ち込まれれば、外来生物の混入で大浦湾の生態系や沖縄の農作物が重大な影響を受ける。その対策を動議は日米両政府とIUCN本部に提言・勧告している。

 SDCC参加団は、この勧告および過去3度のIUCN勧告・決議(ジュゴン保全計画の策定と環境アセスメントの見直し)の履行を促す国際署名に取り組んだ。「辺野古の海を守る最良の方法は、基地建設を断念し埋め立てをやめること」と呼びかける。ジュゴン・マスコットや折り紙ジュゴンを並べたブースはいつも人だかり。着ぐるみジュゴンを先頭にした道ジュネー(練り歩き)も大反響だ。最終日までに集めた署名は82か国1513筆に上る。

 今回のIUCN世界会議の最大の成果は、沖縄ジュゴン保護が取り上げられた2000年アンマン(ヨルダン)会議以降5回目にして初めて、当事者である自治体の代表が「生物多様性豊かな海を破壊する基地建設に反対する」と世界の環境問題エキスパートたちを前に公式に、きっぱりと表明したことだ。

 安慶田(あげだ)光男沖縄県副知事は2日、「グローバル・グリーン・アイランド・サミット」で発言した。同サミットのテーマは「持続可能な島しょ間協力枠組みの確立」。だが、発起者の韓国・済州(チェジュ)特別自治道知事は、「持続可能」な発展を妨げる海軍基地建設問題にひと言も触れない。

 これに対し、安慶田副知事は「大浦湾は絶滅危惧種ジュゴンの生息地で、現在も新種の生物が続々発見される生物多様性の高い海」と指摘し、「日本政府はIUCNの度重なる勧告を真摯(しんし)に受けとめ、辺野古の美しい海を埋め立てる現行移設計画を変更してほしい」と求めた。

勧告実現のチェックを

 稲嶺進名護市長は4日、SDCC主催の記者会見で「ジュゴン保護キャンペーンセンターのお世話になり、今回のIUCNに参加する機会を得た。ぜひ私たちの声を聞いてほしい。専門家の知見、力を貸してほしい。子や孫に豊かな自然を残していけるかどうかは、私たち親の世代にかかっている」と熱く訴え。

 続くポスターセッションでも、ワークショップでも、稲嶺市長は名護市作成の全面カラー英語版パンフレットを示しながら、「大浦湾には世界に誇れるサンゴ礁が残されている。環境への影響は少ないとする政府のアセスは科学的とはいえない」と強調。IUCNにも、4回の勧告に感謝を表しつつ、「勧告が生かされているのかどうかチェックしてほしい。私たちのパートナーとなって問題解決に挑んでほしい」と要望した。

 初めて米国で開かれたIUCN世界会議。そこで日米軍事同盟の根幹をなす政策に変更要求が出された。その意味は限りなく重い。 《続く》



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