2016年10月07日発行 1447号

【みるよむ(413)2016年9月17日配信 イラク平和テレビ局in Japan バグダッド市民は 自爆攻撃に屈しない】

 2016年7月3日、バグダッドのカラーダ地区でイラク占領後最大規模の対市民自爆攻撃が行われ、300人以上の命が奪われた。「イスラム国」(ISIS)が犯行声明を出している。サナテレビはこの事件の直後に現場に入り、市民の声を直接取材した。

 冒頭、残忍なテロ攻撃でカラーダ地区の繁華街が爆破され、大変な被害が出ている様子が映し出される。サナテレビは、制作の姿勢として一般市民や子どもに見てもらえる映像作りをしている。テロ攻撃の現場でも悲惨さだけを強調することはなく、死体や流血の場面を出していない。それでも爆弾攻撃のすさまじさはよく伝わってくる。一度の攻撃で300人以上もの人たちの命が奪われるとは、何と恐ろしいことか。

 この対市民攻撃は、ラマダン(断食月)明けにそれを祝うイード祭の直前に実行された。イード祭のためのお祝いの品物や食料を買い求める人びとでごった返す繁華街を狙ったのだ。

 市民は「犠牲者の大部分は若者と女性、子どもたちだ」と憤り、「私たちは犠牲者の家族に連帯するために今日ここに立っている」と語る。もう一人の市民は「アメリカとシオニズム(イスラエルをさす)、サウジアラビア、カタールが『イスラム国』のようなテロリスト集団を育ててきた張本人だ」と糾弾する。

 男の子が訴える。15歳だった彼の友だちは、たまたま爆発現場の近くでサッカーをしていたために犠牲となった。「お墓に入れてあげたいのに、死体を見つけることもできません」と言う。この子が、そして同じように被害を受けた子どもたちがどれほど心に傷を負っただろうか。

 しかし、バグダッド市民は黙っていない。ある市民は、治安部隊が抗議デモの参加者を殴るという弾圧の中でも、「来週の土曜日に、私たちはタハリール広場に行きますよ」と決意を表明する。

立ち入り禁じる政府

 この短い映像の取材にも大変な労力が払われている。イラク政府当局は、市民のの批判を恐れ、今回のカラーダ地区の爆破現場には報道陣の立ち入りを禁止した。サナテレビのスタッフたちは、当局の目をかいくぐり、弾圧を受ける危険を冒して現場に入り、市民の生の声を伝えている。

 真実を伝え権力の横暴を暴くことの重要性を実感させられる映像だ。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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