2016年10月07日発行 1447号

【DVD紹介/高江―森が泣いている/藤本幸久 影山あさ子共同監督 森の映画社 64分/無法支配をはね返す姿描く】

 作品は両監督が7月11日から1か月間、沖縄県東村・高江での闘いを密着撮影したもの。違法を承知の上での弾圧の数々を克明にとらえた現場証拠であり、その目撃者を全国に広げることを意図した記録映画だ。しかも、9月16日福岡高裁那覇支部判決の直後から公開が開始されている。

 映像は、参院選での伊波洋一さん圧勝の翌朝に始められた資材搬入から現場を捉える。早朝からの機動隊バスによる県道封鎖、座り込む人びとの排除(7/22)。そして、テント撤去を許さぬ現地大行動集会(8/5)へと休むことなく続く。この1か月余の反撃の具体的場面は、ぜひあなたの肉眼で作品の中で見てほしい。

 カメラは、現地リーダー山城博治さんを全編の柱に、汗あり、涙ありの人間味あふれた姿を存分に映し出している。この力なんだ≠ニ何度も思う。地元住民、支援者、老若男女何の分け隔てもなく、あたり前の生活を求め、不当な弾圧にも整然沈着に抗議を貫く―この日々を共有しあった心の絆。これが強大な権力を向こうにまわし、悪質な手出しを何度受けても、逆に彼らを沈黙の中に追い込んでいる一番の力なんだと。全編を流れるこの作品のメッセージであろう。

 両監督はまた高江の闘いに大きな希望を込めている。それは沖縄の反戦の歩みを歌い続ける海勢頭(うみせど)豊さんの代表曲『喜瀬武原(キセンバル)』を40年余の歳月を超えて響かせていることから伝わってくる。喜瀬武原闘争は、1972年2月、強行される米軍実弾演習に対して200名の阻止団が着弾地に3昼夜決死の座り込みを決行、ついに1発の実弾も発射させず、すべての沖縄県民の心に残り続ける闘いになった。サブタイトル「森が泣いている」は同曲の忘れられないフレーズ「山が泣いている」に重ねたもの。高江の昼夜を分たぬ闘いは、喜瀬武原の闘いの力が今も生き続け全国・世界に共感を広げている、その姿なのだと思いが広がってくる。

 最後に高裁判決にかかわってひとこと。翁長(おなが)知事の埋め立て承認取り消しを「違法」と裁判を起こしたこの国の政府。しかし、これだけ違法行為を重ねておいて、他の「違法」を言う資格がそもそもあるのか。

 映像記録は、私たちの当然の怒りに力と励みを与えてくれる。わずか2か月の緊急制作。ここに残された犯行事実はもはや消せない。上映会の広がりを期待してやまない。    (K)

・上演権付価格 1万円
 申し込みはFAXで。森の映画社011-351-1068、またはマブイ・シネコープ06-6786-6485

・緊急上映会
 大阪・シアターセブン(十三)で上映中。東京・ポレポレ東中野(10月15日〜)、沖縄・桜塚劇場(同)

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