2016年10月14日発行 1448号

【10・2MDS集会 基調講演要旨 自民改憲草案を先取りし 憲法破壊を狙う安倍政権 沖縄に連帯し 改憲攻撃と闘おう MDS(民主主義的社会主義運動)委員長 佐藤和義 副委員長 山川義保】

 10月2日、東京、大阪でMDS(民主主義的社会主義運動)集会が開催された(4・5面に関連記事)。基調講演について、安倍政権の改憲の動きと闘う方針を中心に要旨を掲載する(見出し、まとめは編集部)。

 9月26日臨時国会が始まり安倍首相は所信表明演説で改憲への強い意志を表明した。

 改憲論議の基本とするのが自民党改憲草案である。安倍・自民党は野党の撤回要求を拒み、この改憲草案に基づく改憲を狙っている。そのために安倍は、自民党総裁の任期延長を画策し、東京オリンピックまで居座ろうとしている。同時に、現憲法の実態的破壊を進めていることを強調しなければならない。

 改憲は、条文を変えてからその内容が実行されるものではない。秘密保護法や戦争法のように、すでに改憲の中身は実行されつつある。条文改憲はその仕上げ、現憲法破壊の確定としてある。

戦争法の実行は9条破壊

 9月19日で戦争法強行1年が経過し、政府は戦争法を実行してきている。

 憲法違反の戦争法で「駆けつけ警護」「宿営地共同防衛」が認められた。「駆けつけ警護」とは、国連やNGOの職員らが離れた場所で武装集団に襲われた際、武器をもって助けに行くことである。11月中旬に南スーダンPKOに派遣される陸上自衛隊の部隊が「駆けつけ警護」など新任務の訓練を始めている。

 南スーダンは内戦状態にあり、【図表1】のようにPKO参加5原則を満たしておらず、直ちに撤退すべきだ。にもかかわらず、装備を強化し、戦闘に乗り出そうという。



 「駆けつけ警護」について東日本の50代の陸自隊員は「こんな短期間の訓練で、武器使用手順を身に着けたり、海外で任務に就く腹を決めたりすることができるのか」(8/25東京新聞)と不安を口にする。戦争法による海外での戦闘の可能性を考え、自衛官応募者は4年連続減った。

 これに対する政府の回答は、PKO弔慰金現行6千万円から9千万円への増額検討だ(8/31産経)。自衛隊員の死者が出ると想定しているのだ。

 安倍は海外での武力行使をもくろむ。憲法第9条が禁じる武力行使を実行してしまえば、現憲法の根幹を破壊したことになる。違憲の戦争法実行で9条を破壊する。これを安倍内閣は進めている。

辺野古・高江は改憲先取り

 9月16日、福岡高裁那覇支部は辺野古訴訟で沖縄県敗訴のでたらめ判決を行った。翁長(おなが)知事が「大変あぜんとしている」と言うように、判決は、自治体には国防・外交への権限も立場もないと決めつけ、一切の審理もなしに辺野古移設が唯一≠フ国の主張をそのまま展開する作文だ。

 東村高江ヘリパッド建設を巡る状況は、自民党改憲草案の緊急事態条項の先取りを示す。機動隊派遣について、沖縄県公安委員会の要請以前に警察庁が事実上派遣指示。県道封鎖、新聞記者拘束、市民の不当逮捕、工事関係車両の自衛隊機による輸送、はてはロープで縛る不当拘束。多くの法令に違反し、基本的人権を踏みにじる国のやり方は、緊急事態条項が「国その他の公共機関の指示に従わなければならない」とすることを先取りしている。

 高江での異常な弾圧は「表現の自由」を定めた憲法21条違反だ。自民改憲草案が「公益及び公の秩序」に反する活動は認めないというのを警察は実行している。日米軍事同盟に反する活動は公益を害するというのだ。自民党改憲草案が現実化されるならば、沖縄だけでなく日本全国どこにおいても、戦争反対の運動は合法的につぶされる。

社会保障削減で25条否定

 また、安倍政権は軍事費とは対照的に社会保障費を徹底削減する。グローバル資本に財政支出を集中するためだ。

 生活保護基準が3回にわたって切り下げられ、70〜74歳の医療費自己負担を2割に引き上げ。介護では要支援者が保険給付から外され、年金も3年連続で引き下げられた。その考え方の根本は「自助」。これは憲法25条の生存権の否定であり、改憲草案第24条「家族は互いに助け合わなければならない」として政府の責任を逃れるものだ。

改憲とどう闘うか

 安倍政権は、戦争法実行、辺野古新基地建設・高江ヘリパッド建設、社会保障の切り捨てで現憲法を破壊し、自民党改憲草案を先取り実行しようとしている。その上に、今後の日本をグローバル資本の思うがままにするための改憲をしようというのである。

 では、どう闘うか。

 第一に、沖縄闘争に連帯し勝利することである。安倍が高江ヘリパッド建設を「もはや先送りは許されない」と言うなら、闘いの力で先送りさせてやらねばならない。

 9月21日、高江の住民ら33人が国を相手にヘリパッド工事の差し止め訴訟を起こした。自分たちの生活を守りたいと立ち上がった。この闘いに連帯し勝利しよう。

 辺野古新基地建設についても辺野古現地を支援しつつ、最高裁闘争に取り組む必要がある。連帯の闘いを強化しなければならない。

 第二に、改憲を先取りするあらゆる攻撃と闘うことである。南スーダンPKOへの派兵―駆けつけ警護を許してはならない。毎日新聞世論調査(9/3〜9/4)によれば駆けつけ警護反対48%で、賛成39%を上回る。この力に確信を持ち闘う。生存権、幸福追求権を奪う社会福祉切り捨て、「自助」路線に対し闘う。介護保険への国庫負担を倍増し、介護保険料を上げさせず、サービス切り捨てを許さない。

 第三に、アベノミクスと「一億総活躍」のうそを市民に宣伝し、本当に格差拡大を阻止し、貧困を追放する闘いに取り組むことである。

 市民のかなりの部分がアベノミクスキャンペーンにごまかされている。この嘘を打ち破るためにも、アベノミクスによる格差拡大の事実を突きつけ、介護、医療、奨学金、保育の現状を訴える。様々な運動団体の署名を通じてアベノミクスのもたらした惨状を明らかにしよう。

緊急署名で市民に訴え

 第四に、広く市民に訴えるために全交が提起している沖縄・改憲阻止緊急署名を徹底的に集めることである。

 自民党は、メディアを支配するとともに、分析し、どう有権者に訴えるかを深く研究している。エム・データ社はテレビを365日24時間見てあらゆる放送内容をデータベースに記録、ホットリンク社はインターネット上のブログや掲示板の書き込みをすべて記録しデータベース化している。【図表2(略)】のように詳細なレポートが自民党に提出され、有権者にどういう言葉で訴えるのが効果的かを決めている(小口日出彦『情報参謀』講談社現代新書)。

 また、改憲勢力は小池東京都知事や日本維新の会のように「改革」を装うことで市民の支持を集め、改憲に誘導しようとしている。

 小池が旧勢力自民党都議会のボスと闘う演出をマスメディアは行っている。小池は9月9日、待機児童解消に向けた緊急対策として保育サービスの定員を5千人増やすと発表した。だが、その内容は「みなし保育士」を増やす、基準を緩和し狭い保育所に押し込むものだ。子どもにとって大切な保育環境が無視され、しかも株式会社に保育所を経営させ、ベネッセなどの大資本に保育市場を提供する。小池は安倍政権が進める新自由主義政策を保育分野で実行しようとするのである。

 小池や、維新の「改革」はグローバル資本の要求であり、うそを重ねるしかない。しかし、我々の強みは真実を語っていることである。署名では市民との対話が成立する。メディアに支配された市民にあらゆる手段を使って働きかけ変革するチャンスである。

市民・野党共闘の強化

 第五に、これらの闘いの力で野党共闘を強化することである。参院選での画期的野党共闘の成果を踏まえ衆院選に備えるべき時である。

 東京新聞の試算によれば衆議院小選挙区で野党共闘が実現した場合、2014年衆院選の選挙結果からの試算では野党が43から91に2・1倍となり、自公は231から185にダウンする【図表3】。



 しかし、共闘をつぶそうとする勢力が存在する。連合の神津(こうづ)会長は「(共産党と)政権選択の衆院選で手を組んでやることは、ありえない話だ」(8/16読売)と共闘を否定する。民進党の参議院議員の22%は改憲賛成だ。だが、戦争法反対闘争、2000万人署名の力が参院選での野党共闘を実現したように、沖縄・改憲阻止闘争の力で市民と野党の共闘は実現できる。

 9月23日の4野党党首会談で10月衆院補選、次期衆院選でも「できる限り協力を進める」ことが確認された。衆院補選での野党共闘はまだできていないが、共闘実現と勝利へ市民の取り組みを強めなければならない。

 改憲反対の世論に確信を持ち、沖縄に連帯して闘うならば改憲阻止闘争は勝利する。 
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