2016年10月14日発行 1448号

【ルポ 沖縄・高江最前線/基地建設を助ける無法者集団/機動隊の暴力を全国に知らせよう 派遣元自治体で違法行為の暴露を】

 沖縄県東村高江と国頭村安波(くにがみそんあは)のやんばるの森に防衛局が米軍オスプレイ用着陸帯の新設工事を強行している。安倍晋三首相の「年内完成」号令の下、暴力団と化した各都府県機動隊の凶暴さはエスカレートしている。記者は9月19日、20日、朝6時頃からN1ゲート前にいた。市民を犯罪者扱いする本土の若い機動隊員に、民主化を願うイラク民衆に銃を向けた米兵の姿を思った。(豊田 護)

「どこの新聞社?」

 「どこの新聞社ですか」。機動隊員の間を自由に動き回り、写真を撮る記者が目障りだったのだろう。沖縄県警の広報室だと名乗る警官が声をかけてきた。犯罪現場でもないのに市民の動きを違法収録している部署だ。「見ればわかるでしょう」。胸に下げたMDS新聞社の腕章を示した。「腕につけてもらうようマスコミとは合意しているが、知らないのか」。そんなことを言ってきた。

 地元紙記者を拘束した時、「記者証が腕になく見えなかった」との苦しい言い逃れを思い起こした。拘束する気なのか。「誰と合意したのか知らないが、取材しやすいところにつけて、いけないのか」と返した。

 しばらくして、別の警官が同じように声をかけてきた。今度は沖縄県警の警備課だという。「沖縄県警もいるの」と思わず聞いた。現場対応は県外機動隊と思い込んでいた。「どこに何人来ているの」と質問したが答えず、離れていった。また、別の広報室の警官が来た。「どこの新聞社?」「あなたは、どこの誰」「広報室の国吉です。おたくは」「名乗る必要はない」「こっちが名乗ったのに、名乗らないのか」。そんなやり取りをした。

 メディアへの露骨な取材妨害はさすがにできなくなっている。にもかかわらず、地元紙以外に、暴力団と化した機動隊の実像を伝える大手メディアはほとんどない。

「首絞まっちゃうよ」

 「危ないので、動いてください」「歩けますか?歩けませんか?」「動かしますよ」

 機動隊がゲート前に座り込んだ市民を排除にかかる。マニュアルでもあるのか、決まり文句を繰り返す。高齢者だろうが女性だろうが全くためらわない。隊員が口にするのは「安全確保」。だが、それは市民の安全ではない。工事車両の安全だ。ゲート前に座り込んだ20人ほどが道路脇に運ばれ、そのまま機動隊員の壁の中に閉じ込められた。直後、パトカーに先導されたダンプカーが連なってやってきた。

 沖縄には千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の6都府県の機動隊が来ている。いずれもデモ弾圧や暴力団対応に「手慣れた」集団だ。この日、最前線には「一番凶暴」と悪評の大阪府警が立った。見下すような大阪弁と肩をいからす態度に、記者も冷静さを失いかけた。

 機動隊の暴行は本紙でも何度か取り上げた。首を絞められたり、肋骨を折られたりした市民の救急搬送が絶えない。9月29日、やんばるの森の違法伐採現場では、抗議する市民をロープで縛り、急斜面を引きずり上げ排除した。「首絞まっちゃうよ」と笑いながら縛った隊員、押さえつけた市民に「凶悪犯だ」と暴言を吐いた隊員もいると地元紙は伝えている。

 マスコミや支援者の監視がない現場では全くブレーキがかからない。東京や大阪の街中なら決してできないことだ。「バレない」と思っているのか、「政権の指示」と居直るのか。いずれにしても自らの行為を正当化するには、市民を犯罪者と思い込むしか、自分を納得させられない隊員があわれだ。

イラクの米軍を想起

 機動隊員に囲まれたZENKOメンバーが、若い隊員に切々と訴えていた。「あなたは、人殺しの訓練をする基地建設を助けているのよ」「奥さんや子どもに、胸を張って話せるの」「自分の人生、大事にして」

 沖縄県民が辺野古や高江の基地建設に反対するのは、沖縄戦の体験があるからだ。民意を踏みにじる安倍政権の態度に、「琉球処分」の屈辱が重なってくるからだ。だが、面前に立つ機動隊員にそんな沖縄の歴史を知る者は少ないだろう。地元の機動隊ではできないことをやらせるために県外から鎮圧部隊を投入した。派遣にあたって、「過激派」「犯罪者」との刷り込みを行っているに違いない。

 イラク占領に際し米軍兵士は、聖地巡礼者に送る敬称「ハッジ」を蔑称として使った。イスラム教徒を見下す意識を刷り込まれイラクにきた。だが、現地での体験が反戦兵士を生んだ。そんなことを思いながら、機動隊員の顔を見た。沖縄戦の一コマでも学んで帰ってくれたらと願わずにはいられない。

 地元で闘う人びとは口々に言う。「見たこと、体験したことを本土で広げてほしい。あなたの自治体の機動隊が何をしているのか、伝えてほしい。ぜひ、高江に来てほしい」。安倍政権は直接的な暴力で民意を押しつぶす。その事実を暴かねばならない。本土での闘いが一層問われている。



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