2016年10月21日発行 1449号

【高江ヘリパッド建設阻止 年内完成狙い無法行為続出 「安倍の勝手にはさせない」】

 安倍晋三首相は9月26日臨時国会の所信表明演説で、米軍北部訓練場の高江ヘリパッド建設について「先送りは許されない」と年内工事完了を明言。以降、現場では今まで以上に強引な工事と暴力的な市民排除がきわ立つ。

やんばるの自然を破壊

 工事を進める沖縄防衛局は沖縄森林管理署との事前協議書・同意書の中で、新たに運搬道路造成区域の立木を3732本、面積5688平方b分、伐採するとした。これは工期短縮のための伐採だ。防衛局は当初「環境影響評価図書」の中で自ら「自然環境の保全に最大限配慮する」と記載し、「N1」(2か所)「G」「H」と呼ばれる地区のヘリパッド建設工事を順次進めていく計画だった。

 しかし、今年7月、工事を前倒しする政府方針に沿って3地区同時に着工。資機材を運搬するモノレール設置やヘリによる重機空輸に変更した。さらに、安倍首相が年内工事完了を打ち出すのと連動して、9月にはモノレール設置を中止、代わりにN1地区からH地区まで工事用道路を造成するという計画を出した。やんばる(沖縄本島北部)の自然を大規模に破壊し、自らが記した「環境に配慮」にも反する許されない行為だ。

 また、事前協議書に記された範囲を上回って伐採されているとの追及に対し、防衛局は「伐採範囲はあくまでも標準的な範囲を示したもの」と開き直った。それでは全く範囲の意味をなさない。

 日々の報道では、見るも無残な大規模伐採の姿が露わになっている。ヘリパッド着陸帯や建設に伴う資機材運搬道路のルートが空撮ではっきりと確認できるほどに工事は急速に進められている。

機動隊の異常な暴力と弾圧

 9月22日、ヘリパッドに反対する市民は、ゲート前に加え、米軍北部訓練場の提供施設内での直接阻止行動に踏み切った。沖縄県が赤土等流出防止条例に関連して現場調査を予定していることもあり、「工事が進み、後の祭り≠ノならないよう調査まで市民の力で阻止したい」(沖縄平和運動センター山城博治議長)との思いだ。市民が作業員の伐採しようとする木にしがみつく、ショベルカーの前に座り込むなど、文字通り体を張った非暴力抗議行動が展開されている。

 非道にも、機動隊員は訓練場内で抗議する市民に対し、一人ずつロープで手足や腰、リュックサック等を縛り現場から引き離す強制排除に乗り出し、問題となっている。

 沖縄県警は「危険防止と安全確保のためやむをえず使った」と釈明するが、ロープは工事用ロープ(トラロープ)で人命救助用などではない。まして現場はすり鉢状の急斜面でこのような拘束行為は大変危険だ。足首をひねり搬送される市民、腕や足に複数のあざが残る市民などけが人が続出した。明らかに反対市民を拘束する目的であり、弁護士や学者らも「身体の自由を拘束する危険行為、逮捕・監禁罪に該当」「必要最低限の警察活動を逸脱」と厳しく批判した。

 また拘束の際、笑いながら「首も絞まっちゃうよ」と対応した警官、抗議市民に「凶悪犯罪者」と発言する警官など、身体的暴力のみならず悪質な暴言も目立っている。

 抗議参加者のけがや体調不良について、県警本部長や公安委員は「抗議参加者同士で接触、自ら転倒し負傷した」(10/5沖縄県議会答弁)と警察官の行為によるものではないと否定し、違法行為の責任逃れをしている。

高江土曜大行動に250人

 10月8日、土曜一斉大行動の日。東村高江N1ゲート前には総勢250人が結集し座り込んだ。ZENKOの10月連帯ツアー団と沖縄スタッフも早朝から合流した。

 集会では、この間新聞で報じられた、基地内侵入者を逮捕できるとする刑事特別法、さらには北部訓練場に限定して日本側の逮捕権を認めるとした威力業務妨害罪に話が及んだ。参加者は怒りをぶちまけた。山城博治さんは「高江にはフェンスや境界線もないのに、いきなり逮捕などありえない。こんな脅しをかけなきゃいけないくらい彼らは立往生している。こういった連中に脅しをかけられ、はい分かりました≠ニいう運動ではないことを知らしめたい」。これからもめげることなく毅然と闘うことを参加者と確認した。

 午前10時、N1ゲート前に「土砂の搬入なし」との報が入り、工事を止めた喜びを分かち合った。

政府の懐柔・分断策

 同じ8日、菅義偉(すがよしひで)官房長官は沖縄を訪れ、翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事と会談し年内に米軍北部訓練場約4千ヘクタール返還を目指すことを伝えた。政府は、東村高江区にヘリパッド建設による「振興策」としての財政支援の方針を固め、「返還」「振興策」と引き換えに辺野古・高江の工事着工への批判を少しでも抑え、ゆさぶりをかけようとしている。

 だが、先立つ9月21日、東村高江の住民ら33人が国を相手にヘリパッド工事の差し止めを求め那覇地裁に提訴した。政府が総力をあげた攻撃にもかかわらず、当事者の立ち上がりは広がっているのだ。

 「年内に高江の工事を終わらせ、年初めには辺野古着工と考えているかもしれないが、安倍の好き勝手にはさせない」(山城さん)。闘いの現場は基地建設阻止へより一層決意を固めている。   (A)



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