2016年10月28日発行 1450号

【史上最高の軍事費5兆1685億円要求/海外派兵のための大型兵器/違憲の軍事予算を削れ】

 防衛省は2017年度予算として5兆1685億円の概算要求を提出した。第2次安倍内閣発足後、軍事費当初予算は4年連続で増加を続け、16年度は史上初めて5兆円を突破。17年度も対前年度費2・3%増だ。「自衛のための必要最小限度の実力」と称することで長年ごまかし続けてきたが、これほど巨額の軍事費は誰の目にも戦力不保持の憲法9条違反である。

世界を照準に大軍拡

 軍事費押し上げの要因は、高額の大型新装備の調達だ。その狙いは対中国・朝鮮を名目とした軍拡、グローバル資本主義諸国と連動する「対テロ」軍事同盟、軍需産業の保護・育成にある。

新型潜水艦1隻で760億円

 16年度概算要求で、644億円を計上した潜水艦建造は既存のそうりゅう型大型潜水艦(2900トン)1隻。17年度概算要求では、そうりゅう型を上回る新型潜水艦(3000トン)1隻760億円の建造を要求した。潜水艦建造は川崎重工とIHIが交代で受注している。

 佐賀空港や木更津駐屯地への17機配備を目指すオスプレイは、引き続き4機393億円を計上した。合わせて「水陸機動団」(自衛隊版海兵隊)新設に伴う水陸両用車11両84億円を計上する。航続距離6500qを誇るC―2輸送機3機667億円とC―2で空輸可能な16式機動戦闘車33両237億円も調達する。

 潜水艦は対中国海洋進出のため、オスプレイなどは島嶼(とうしょ)防衛のためとする。

 弾道ミサイル攻撃への対処として新型ミサイルの導入など1203億円を新規に要求している。

 3機分の機体構成品と遠隔操作地上装置を調達済みのグローバルホークは、18年度では1機分の組み立て費用等195億円を計上した。グローバルホークは遠隔操縦で長時間滞空できる無人機だ。偵察機だが、攻撃能力を持つプレデター導入への突破口になりかねない。

F35戦闘機で1036億円

 レーダーを回避するステルス性能に優れデータリンク機能(情報共有機能)をもつF―35A戦闘機の取得は、昨年度に引き続き6機分1036億円を計上。航空自衛隊は合計42機を導入する。最初の4機は年内に米国から納入される予定で、残りの38機は三菱重工が組み立てる。組み立てラインは15年末にすでに稼働しており、整備費も防衛省持ちだ。同機は韓国軍も導入予定で、日・米・韓による中国・朝鮮包囲網の一翼を担う。

 だが、対中国・朝鮮は導入の「目的」の一つに過ぎない。例えば、オスプレイの航続距離は4000q。フィリピンまで余すところなくカバーする。C―2は6500q(12d積載時)でオーストラリア北部まで飛べる。

 戦争法は「国際平和共同対処事態」など、様々な口実をつけて自衛隊の海外派兵・同盟軍との共同作戦を可能としている。安倍が掲げる「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」「積極的平和主義」の下で、自衛隊を世界中で殺し殺される普通の軍隊≠ノ変えるための兵器群だ。以上の概算要求内容は、安倍内閣の中期防衛力整備計画(14〜18年度)に基づく既定路線だ。


軍事技術でも覇権目指す

 さらに目新しいのは、「安全保障技術研究推進制度」に110億円を計上したことだ。これは、軍事目的に転用できる基礎研究について研究費を支給するもの。民間企業はもとより、大学もその対象に含める。今年度予算6億円から一気に18倍の予算要求だ。

 日本の大学への軍事技術関連資金の提供は米・英・韓なども展開している。米軍による日本の大学への資金提供は128件6億千万円(10〜15年)に上り、例えば大阪大学へはレーザー兵器開発につながる研究費として3年間で3000万円を提供した。

 「研究推進制度」は戦後、軍事研究との距離を置いてきた大学・研究機関を取り込み、軍産学一体となった挙国一致体制づくりを狙う。これは、軍事技術における覇権を目指すとともに、日本の軍需産業に兵器市場への道を開き輸出産業化しようという安倍の意図を受けたものだ。

 対テロ戦争のための海外派兵と死の商人育成を進めるための概算要求。もはや建前の「防衛」さえかなぐり捨てた侵略への違憲軍事予算を削減・撤回させ、貧困対策や社会保障に回させよう。
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