2016年10月28日発行 1450号

【知らなかったではすまない 自民党改憲草案 ―企業の金儲けと戦争のために人権を手放しますか?― 編集・発行 平和と民主主義をめざす全国交歓会(ZENKO) 頒価200円/安倍改憲の危険な狙いを徹底解説】

 7月の参院選の結果を受け、安倍首相は、自民党の2012年改憲草案をベースにしつつ衆参両院の憲法審査会で改憲案をとりまとめると何度も表明している。現行憲法のほぼ全体を書き改めているこの改憲草案の危険なねらいを広く訴える運動が問われている。

 ZENKOは、沖縄新基地建設と憲法改悪に反対する緊急署名運動を呼びかけるとともに、自民党の改憲草案を批判する新しいパンフレットを発行した。自民党改憲草案を論じた本は数多く出版されているが、ZENKOのパンフレットは草案の問題点を実に簡潔に指摘しているので、地域での学習会に適している。

 このパンフレットを読むと、自民党改憲草案は9条を改正して集団的自衛権を行使する国防軍を設けるにとどまらず、現行憲法の3大原理(国民主権、基本的人権の尊重、平和主義)を実質的にすべて放棄していることにあらためて気づかされる。現行の12条や13条にある「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」へと置き換えることで、すべての基本的人権が国益に従属する権利に変質する。国防義務、家族の助け合い義務、緊急事態指示服従義務など、おびただしい数の新しい義務を国民に課している。その一方で、「職業選択の自由」に対しては「公共の福祉」による制約を免除することで、大企業の「営業の自由」を無制限に認めている。これでは、憲法が国家権力を縛る法規ではなくなり、国民を拘束する法規に変えられてしまう。

 パンフレットは、改憲手続き法にも言及している。50〜45名の委員しかいない憲法審査会が憲法改正原案をいつでも容易に衆参両院の本会議に提出することができるという点には、最大の警戒心をもつ必要がある。憲法改正国民投票には最低投票率が設けられておらず、自民党改憲草案の内容を事前に知らされないままいつのまにか別の憲法ができあがっていたという事態すら起きかねない。パンフレットを参考にしながら、改憲草案の危険性と個人の尊厳の大切さを市民に訴える簡潔で的確な言葉を探さなければならないと感じた。

 自民党は実は小泉政権時代の05年にも、現行憲法の全体を書き改めた「新憲法草案」を発表している。12年の改憲草案があまりにも「保守的」なので、それよりは「穏やかな」05年の草案をも憲法審査会での議論の素材にして野党を巻き込むという動きが自民党内にある。たしかに、05年草案は「国防軍」ではなく「自衛軍」という名称にとどめ、緊急事態条項についても12年草案のような詳しい規定を設けていない。しかし、両草案に本質的な違いはない。むしろ12年草案にこそ自民党の本音が露骨に表現されているので、ZENKOのパンフレットを通じて12年草案の中身をこそ市民に広く知ってもらう必要がある。   (S)

 問い合わせはZENKO(東京 03-5284-4970/大阪 090-5646-4273)まで
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