2016年11月04日発行 1451号

【ミリタリー 緊張激化させるTHAAD配備 日朝ピョンヤン宣言の道こそ】

 朝鮮の核・ミサイル開発阻止をはじめ東アジアの軍事的緊張関係の深刻化を防ぐことは緊急の課題である。必要なのは軍縮環境の整備と外交努力の積み重ねであることはこれまでも強調してきた。

対朝鮮は軍事圧力のみ

 だが、米国を中心にした日本などの「同盟国」の朝鮮に対する対応は、軍事圧力一辺倒の外交ゼロ政策である。目の前で繰り広げられる大々的な「米韓合同演習」と称する対朝鮮の軍事的威嚇は、逆に朝鮮政府のより強い対米韓軍事的威嚇行動への衝動を加速度的に高めているのが実情だ。

 とくに韓国へのTHAADミサイル(高高度ミサイル防衛)配備は、朝鮮政府の態度をいっそう硬化させるだけでなく、東アジアの緊張緩和の鍵を握るとされる中国との関係を一気に悪化させた。

 米軍がTHAADミサイルを韓国に配備する目的は、韓国を朝鮮のミサイル攻撃から守るためではない。韓国内の米軍基地とともに日本の米軍基地を守ることにある。THAADミサイル配備の有力候補地はソウルから200キロ以上離れた慶尚道などの南部圏域だ。射程距離が約200キロであるTHAADではソウルを守ることができないことははっきりしている。

緊張高める中国包囲網

 そもそも「ピストルの弾をピストルの弾で撃ち落とす」といわれる「ミサイル防衛」の怪しさは置くとしても、中国が最も警戒し反発するのはTHAADと連動してXバンドレーダーを配備することだ。アメリカが対中国戦略としてTHAAD配備を推進していることは明らかであり、中国の主要部分でのミサイルの動きをカバーすることにあるのは間違いない。

 米国は、ドミノ的に日本、台湾、フィリピンなどへのTHAAD配備を視野に入れる。推定探知距離2000キロ以上といわれるXバンドレーダーをTHAADシステムとともにこれらの国に配備すれば、米国は中国包囲網を完成することができる。対朝鮮「抑止」に名を借りたこんな軍事一色の危険な計画は、東アジアの人びとの安全も平和も保証するものではない。

6か国協議再開を

 朝鮮の核・ミサイル開発をやめさせ、東アジアの安全と平和を確保する道はすでに存在している。その一つは、2002年9月に交わされた日朝ピョンヤン宣言である。宣言の「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題およびミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した」とする基本精神に立ち戻り、6か国協議を即時再開することである。

 2005月の6か国協議共同声明は「朝鮮半島の検証可能な非核化」を協議国の最大目標とし、「朝鮮はすべての核兵器および既存の核計画を放棄する。NPT(核不拡散条約)、IAEA(国際原子力機関)の保障措置に早期に復帰することを約束」し、「米国は朝鮮半島で核兵器を持たず、北朝鮮を核兵器や通常兵器で攻撃、侵略する意図はないことを確認」などを核心とする。

 事態悪化にもかかわらず日朝ピョンヤン宣言も6か国協議共同声明も破棄されたわけではない。東アジア共同体を展望し、宣言と共同声明に立ち戻り、日朝交渉、6か国協議を直ちに再開させなければならない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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