2016年11月04日発行 1451号

【沖縄・高江ヘリパッド建設阻止へ 治安維持法同然の運動弾圧 差別発言は闘い広げた】

 沖縄防衛局による米軍北部訓練場・高江ヘリパッド建設工事の強行再開から3か月。高江での市民への暴力と排除は自民党改憲草案の「緊急事態条項」の先取りと言われてきたが、最近は「治安維持法」同然の常軌を逸した弾圧が起きている。

 高江と辺野古新基地建設阻止行動のシンボル、沖縄平和運動センター議長の山城博治さんが10月17日不当逮捕された。21日には沖縄戦体験者である87歳の島袋文子おばぁが「暴行容疑」で名護警察署に事情聴取された。同日、山城議長宅と高江N1裏ゲートのテント村をそれぞれ20数名の警察官が家宅捜索。神奈川県警は、高江の行動に参加したキリスト教牧師の自宅を家宅捜査し暴行容疑で逮捕した。

 戦前の特高警察がやったように、闘いのリーダーを逮捕・拘留することで阻止行動の弱体化を狙う。戦後71年の日本で、安倍政権は警察権力を使った異常な組織的弾圧に踏み出している。

狙い撃ちの不当逮捕

 山城議長の場合は、明らかにヘリパッド4か所の年内完成のために阻止行動を委縮させることが目的だ。「反対運動のリーダーの狙い撃ちだった」と県庁幹部も語る(10/19琉球新報)。

 山城議長は、N1ゲートのフェンス付近で鉄線2本を切ったという器物損壊容疑で逮捕されたが、現行犯ではない。県道70号線に出たところで、警察は「逮捕」と言わず「話を聞かせてくれ」と車両に乗せ、「準現行犯逮捕」とした。高江阻止行動をつぶすために仕組まれた逮捕だ。

 島袋おばぁの場合はどうか。右翼の「日本のこころを大切にする党」和田政宗参議院議員ら複数のメンバーが5月9日、辺野古ゲート前に来て「テントは不法占拠だ」と騒ぎながら、座り込む参加者の顔近くまでビデオカメラを寄せて撮影し挑発する行為を繰り返した。カメラが顔に当たりかけたのを島袋おばぁが手で払ったことに、和田らが警察に被害届を出すという異常さだ。87歳のおはぁのこの行為がどうすれば暴行になるのか。

 10月22日、名護署での取り調べには、市民150人が駆けつけておばぁを励ました。これに対し、またも右翼団体が近くでサイレンの大音量を繰り返すなど嫌がらせ。取調室で沖縄戦時のサイレン音を思い出したおばぁは、動悸や震え、悪寒、吐き気を訴え事情聴取は中断した。沖縄戦を生き抜いた人をここまで痛めつける警察とは何なのか。

暴言は個人の問題でない

 高江での警察権力の凶暴さとおぞましさを全国に伝え憤りを広げたのが、大阪府警の20代機動隊員による「土人」「シナ人」発言だ。

 10月18日、抗議行動中、29歳の巡査部長が芥川賞作家の目取真俊(めどるましゅん)さんに「どこつかんどんじゃ、ぼけ。土人が」と発言。別の26歳の巡査長は抗議する市民に「黙れ、こら、シナ人」と言い放った。明らかな差別発言であり、ヘイトスピーチだが、若い機動隊員が普通に使う言葉ではない。

 暴言の背景には、警察内の市民への対応の「研修」等で沖縄県民や抗議する市民を見下す姿勢などを年配の上司から叩き込まれてきたことがあるとしか考えられない。組織人としての職務遂行中の発言であり、単なる一個人の発言ではない。イラク戦争時、米兵がイラク人を「ハジ」という蔑称で呼ぶことで「人間でない」と思い込まされ、平気で暴行や殺害を行ってきたのと同じ構図だ。国策に従わぬものは非国民と扱え≠ニ安倍政権が警察権力に仕向けているものに他ならない。

 10月21日、大阪府警は2人の機動隊員を戒告の懲戒処分としたが、個人の「不適切な発言」ですむものではない。

 沖縄県民の怒りが収まることはない。発言に示された沖縄県民への差別構造に対し、翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事は「言語道断、到底許されるものではなく強い憤りを感じている」と強く批判した。沖縄県議会は、10月28日の臨時会で、「土人・シナ人」発言の抗議にとどまらず、高江から機動隊の撤退を求める決議案の可決をめざす。

高江への連帯は拡大

 今、高江は無法地帯。安倍政権は市民の不当逮捕・拘留を繰り返し、違法も条例違反もお構いなしで年内ヘリパッド完成をめざそうとする。

 だが、それは不可能だ。今回の「土人・シナ人」発言で、高江に関心の低かった県民でさえも事態の深刻さに気付き、これまで以上に新しい県民が高江に駆けつけるようになった。本土からも高江に行く市民が増え続けている。

 うれしい話がある。中南米など海外に移住した県民の子孫たちが5年に一度沖縄に集まる「世界若者ウチナーンチュ大会」が10月20日から始まった。大会中、県内の若者たちが海外からのウチナーンチュの若者とともに高江と辺野古に行くバスツアーを企画し、基地の問題と豊かな自然を案内するという。高江・辺野古をめぐる厳しい状況は続くが、厳しい歴史を生き抜いてきた沖縄県民の不屈の闘いは必ずや勝利を切り拓く。 (N)



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