2016年11月04日発行 1451号

【グローバル資本の勝手放題 1%のためのTPP承認 安倍政権の強行採決許すな】

 臨時国会で最大の焦点になっているのが、TPP(環太平洋経済連携協定)の国会承認である。あまりにでたらめな内容、民意無視・秘密主義の政府の姿勢に市民の闘いが広がりつつある。1%のための批准強行を止めよう。

犠牲になるのは99%

 TPPとは何か。それは、99%の市民・労働者を犠牲にする1%のグローバル資本のための貿易・投資完全自由化協定だ。

 経団連や経済同友会は「TPP協定の早期実現を求める」共同声明(7/13)で述べる。TPP協定は「貿易や投資に関する広範かつ高度な水準のグローバルなルール作りをリードする取り組み」であり、「成長戦略の要である」。日本のグローバル資本にとって全く有利なものだから早期実現を求めているのだ。

 TPPは問題だらけだ。

 第一に、ISDS条項(第9章)である。ISDS(ISDとも呼ぶ)とは、「投資家対国家の紛争解決(Investor-State Dispute Settlement)」の略。投資家・企業が、ある国の協定違反によって損害を受けたと考える場合、仲裁申し立てを行い、損害賠償を求めることが可能となる。エクアドルでは、環境汚染を起こした国際石油企業シェブロンに対して地裁が損害賠償命令を出したが、仲裁裁判所はその執行停止をエクアドル政府に命じた。要は、グローバル資本の側が自らに都合の悪い規制等を行う国の政府を従わせるものだ。

 第二に、農業のみならずあらゆる物品の例外なき関税撤廃である。自民党がTPP反対′約の柱としていた重要5品目(米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)についても、政府は29%(170品目)で関税撤廃に合意。まさに公約破棄だ。政府はTPP発効7年後に農産物輸出国5か国と見直し協議を約束。日本の農業や食糧自給が破壊されようが、関税撤廃によるグローバル企業の貿易フリーハンドを優先したものだ。

全分野で規制緩和

 第三に、あらゆる分野での規制緩和であり、とりわけ健康・食・公共サービスなど命と生活に関わる民主的な規制の撤廃である。たとえば、第8章「貿易の技術的障害」では、遺伝子組み換えなどの「表示義務」を行う際に輸出国や企業が関与する仕組みが盛り込まれている。新たな「表示義務」の付与が貿易障壁≠ニして妨害されることは間違いない。また、第17章「国有企業」には、政府から国有企業への財政援助を禁止すると解釈できる文言がある。鉄道、病院など地域の公共サービスの切り捨てを導く民間企業の参入等が懸念される。

 労働分野でも、ILO(国際労働機関)基準が骨抜きにされ、国際的労働規制緩和の弾みにされかねない。より低い賃金、劣悪な労働条件へ落とし込む底辺への競争≠ェ狙われる。

 TPPは、決して米国に押し付けられたものではなく、日本のグローバル資本自身の強い衝動であり、安倍政権はその意を受けて国会承認強行に躍起となっているのである。

広がるTPP反対の闘い

 TPPの審議について、そもそも議論を行うための情報が開示されていない。交渉参加者は秘密保持契約へのサインが義務付けられ、日本政府と米国政府の交渉過程は黒塗りにされ公開されていない。本文・付属文書合わせて5千ページを超える膨大なもので、短期間で精査し議論することはとても不可能だ。

 9月のテレビ朝日世論調査では、情報開示が不十分なTPPの国会承認について、支持しない44%、支持する36%と、反対が賛成を上回った。

 ところが、自民党衆院TPP特別委員だった福井照の強行採決発言(9/29)に続き、TPPに関する答弁責任者である山本有二農水相まで「私は、強行採決するかどうかは、佐藤さん(衆院運営委員長)が決めると思っている」(10/18)と公言した。4野党の山本辞任要求に、自民党は委員長職権で衆院TPP特別委員会を強行。さらに地方公聴会を議決する暴挙に出た。

 安倍政権は、日本維新の会を抱き込みながら、10月中に衆議院で強行採決しようとしている。この暴走を止めなければならない。

 市民・労働者のTPP批准反対の闘いは各国に広がっている。米国では、反対運動・世論の広がりを背景に、クリントン、トランプ両大統領候補もくりかえしTPPに反対と明言せざるをえない。TPPに調印した12か国はいまだどこも批准していない。

 日本でも、7月の参議院選挙でTPP推進の自民党候補が東北選挙区で相次いで敗れ、新潟知事選でも敗北。農業関係者だけでなくTPPに反対するすべて市民の声が、広範なTPP反対の共同行動を作り出している。運動の力でTPP国会承認を止めよう。

 
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