2016年11月04日発行 1451号

【沖縄・高江 抗議市民に「土人」と暴言/機動隊員個人の問題ではない/「沖縄ヘイト」煽る安倍政権】

 沖縄県北部・高江で進む米軍のヘリパッド建設に抗議する市民に対し、現場の機動隊員が「土人」「シナ人」などとの暴言を浴びせた。公務中の警察官が露骨な差別語で市民を威嚇したのである。これは機動隊員個人の心性の問題ではない。暴言の背景には、基地建設強行を正当化するために「沖縄ヘイト」を煽る安倍政権の姿勢がある。

まさに占領軍の発想

 差別発言をした機動隊員は2人。いずれも大阪府警から「警備」(実態は抗議運動の弾圧)に派遣された20代の男性隊員である。

 10月18日午前9時47分頃、訓練場N1ゲート付近で砂利運搬に抗議していた作家の目取真俊(めどるましゅん)さんらに対し、機動隊員が「触るなクソ、触るなコラァ、どこつかんどんじゃボケェ、土人が!」とまくし立てた。同じ日の午前9時28分頃には、別の機動隊員が県道70号線で抗議行動参加者の通行を制限中に「黙れコラ、シナ人」と言い放っている。

 「土人」「シナ人」ともに、明白な差別語である。土人はもともと「土着の人」を指す言葉だったが、近代以降、「野蛮」や「未開」といった侮蔑のニュアンスを込めて使われるようになった。今でもネットの掲示板などで「あそこの住民は民度の低い土人」といった表現がよく見られる。「シナ人」は言うまでもなく中国人の蔑称だ。

 くだんの機動隊員は「基地建設に反対する沖縄人は日本人じゃない(非国民=中国の手先だ)」という意味合いで、この差別語を発している。全国から弾圧部隊として高江に投入されている機動隊員は、そのような教育を受けているということであろう。まさに占領軍を思わせる。

 米軍が兵士に対し「敵は劣った存在。対等な人間ではない」という洗脳教育を施すことは有名だ。差別感情を刷り込むことによって人間性を麻痺させ、どんなひどいことでも平気で実行できるようにするのである。

 これと同じことを安倍政権は基地建設強行のために行っている。辺野古や高江で、治安当局が抗議の市民に侮蔑的な言葉を浴びせたり、危険な行為でけがを負わせた事例は枚挙にいとまがない。「国策」に従わない者への敵意と沖縄をさげすむ視線があからさまに見て取れる。

 沖縄近現代史家の伊佐真一さんは「戦前、本土から来た役人や警察官たちが、沖縄の人を『土人』と見下していた歴史がある。その意識は、沖縄戦での日本兵による住民殺害や住民への自決の強要と連なっている。そうした記憶が、この一言で呼び覚まされる」と指摘する(10/20朝日)。

発信源は安倍一派

 菅義偉官房長官は10月19日の記者会見で「警察官が不適切な発言を行ったことは大変残念だ」と述べた。証拠映像が拡散しており、さすがにごまかせないと判断したのだろう。ただし、「沖縄に対する差別意識では」との指摘には、「そこはまったくないと思う」と否定した。

 厚顔無恥と言うほかない。民意を無視した基地建設を強行しているのは誰か。その正当化のために「沖縄ヘイト」というべき差別意識や歪んだ現状認識を広めているのは誰なのか。安倍政権及びその取り巻き連中ではないか。

 昨年6月、自民党の文化芸術懇話会なる安倍シンパの会合で数々の沖縄侮蔑発言や歴史を歪曲する発言が続出したことは記憶に新しい。今年5月には、自民党の小島健一・神奈川県議が「沖縄で基地反対と叫んでいる人は基地外の人、キチガイだ」と発言。沖縄の地元2紙についても「本当につぶれたほうがよい」と強調した。

 2013年1月、沖縄の全市町村長らがオスプレイ配備反対を訴え、東京・銀座をデモ行進した際には、沿道から「売国奴」「中国のスパイ」「日本から出ていけ」などの罵声が上がった。日頃から外国人排斥活動をしているレイシストたちの仕業だ。連中のネタ元である産経新聞は「暴力を伴う妨害活動が常習化」(9/26)といった反基地運動叩きを連発している。

暴言かばう松井知事

 そしてまた信じがたい暴言が飛び出した。大阪府の松井一郎知事が自身のツイッターにこう書いたのである。「ネットでの映像を見ましたが、表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました。出張ご苦労様」(10/19)

 大阪府警を所管する立場にある首長が、差別発言を確認した上で発言者をかばい、ねぎらいの言葉までかけるとは…。“国策を防衛する任務の前では人権侵害など小さいこと”と言いたいらしい。松井は翌20日の会見でも、騒いでいる反対派のほうが悪いとの認識を示している。安倍応援団の一員として、政府が言えないことを代弁してみせたというわけだ。

 沖縄の民意を踏みにじる安倍政権の蛮行を許してはならない。まずは機動隊による市民弾圧をやめさせることが必要だ。派遣元自治体への抗議や公金支出に対する住民監査請求など、機動隊を派遣中止に追い込む行動がただちに求められている。   (M)



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