2016年11月04日発行 1451号

【みる…よむ…サナテレビ(416)/2016年10月22日配信 イラク平和テレビ局in Japan/若者がイラク社会を変える―カラーダ地区インタビュー】

 2016年8月、サナテレビはバグダッドのカラーダ地区で市民にインタビューを行った。ここは、7月の対市民爆弾攻撃で300人以上もの犠牲者が出た場所だ。「イスラム国}(IS)が犯行声明を出している。繁華街を歩くだけで命の危険を感じるような状況にされているのである。

 しかし、インタビューに登場する学生や市民はそんな現状に甘んじていない。 ある女子学生は「イラク社会の中で積極的な影響を与えるために貢献している」と語る。「爆弾攻撃などの被害者の家族と連帯するため、この場所で会う」という活動で、「平和や愛、寛容に目を向ける」ことで自分たちの生活の場を変えていこうとしているのだ。

 次の学生は、若者自身が悲観的になっていることについて話す。仕事につくにも大学の試験に通るのにもワイロが必要なことから、「ワイロがいる、お金が必要」を言い訳≠ノ仕事をせず大学に行かないなどの現在のイラクの若者の傾向を批判。そして、対案を述べる。「学習会や討論、いろんな取り組みをすることでイラクの若者にメッセージを届ける」という活動だ。それを「自己発展アカデミー」と表現する。

 大学教員の女性は、カラーダ地区で爆弾テロ攻撃があっても「一緒に肩を組んで立ち上がっているヤジディ教徒やシーア派、スンニ派の住民の連帯する場に触れた」と、その姿を見た時の感動を伝える。彼女は「団結が私たちのスローガン」と明言する。

 別の男性は、カラーダ地区でSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)や集会などを通じて積極的なメッセージを送っている。

 登場する市民は、みな、カラーダ地区を憎しみや対立ではなく、平和と愛、寛容の街にするために立ち上がっている人たちなのだ。

 もう一つ。今回の映像の終わりの方の1カットに注目したい。イラクなど中東では、イスラム主義勢力の強制で足先まで隠す超ロングスカートをはくのが「常識」となっている。サナテレビの映像でも、女性の姿はほとんどそうだ。そんな中、ここでは若い女性が欧米や日本で普通に見られるスカート姿で街の中を歩いている(左上写真)。ほんの短いカットだが、サナテレビの報道姿勢を表現するものではないだろうか。

(イラク平和テレビ局 in Japan代表・森文洋)



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