2016年11月25日発行 1454号

【世界に「核」ばらまく日印原子力協力協定/11・11調印に世界同時行動でノー 闘いは国会承認阻止へ】

 寄稿 コアネット(戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション) 三ツ林安治

署名強行の暴挙

 11月11日、安倍、モディの日印両首相は「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定」(日印原子力協力協定、以下「協定」)に署名した。

 私たちコアネットは、共同の取り組みとして「協定」署名阻止を闘った日印原子力協定阻止キャンペーン2016の諸団体とともに、両政府の暴挙に強く抗議する。

 この「協定」は、世界の脱原発、核廃絶の流れに逆行し、世界を核拡散の恐怖に陥れる許しがたい蛮行である。

 「協定」は、何より、核拡散防止条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)に加盟せず2度も核実験を強行したインドに対して「戦争被爆国日本」が原子力協力を行い、「事実上の核兵器国」としてインドを承認することを意味する。同時に、福島原発事故で世界を震撼させ今なお放射能を排出している日本が、その収束もできないままに危険な原発をインドに輸出することを可能にするものだ。

協力停止条件は入らず

 11日の「協定」署名の焦点は、「インドが核実験を実施すれば協力を停止する」という日本側の条件が「協定」にどう反映されるかであった。もちろん、この条件も「被爆国日本」の体面をとりつくろうものに過ぎず、全く不十分なことは明らかだった。ところが、この点についてすら、条件は「協定」本文に盛り込まれることはなく、「見解及び了解に関する公文」という関連文書に記載されただけ。「インド側が難色を示した」が理由とされるが、まさにインドが核実験を止める気のないことを示している。

 現に、2008年にNSG(原子力供給国グループ)が原発売り込みのためにNPTの枠外にあったインドを「例外扱い」して原子力協力を解禁した後、インドは核兵器の増産を進めてきたのだ。

協定阻止キャンペーン2016

 私たちは今年9月、日印原子力協定阻止キャンペーン2016を立ち上げ、モディ首相来日と「協定」署名を阻止するために準備を進めてきた。来日中のクマール・スンダラム氏(インド核廃絶平和連合)と連携し、全国各地で交流会、集会を開催。昨年以上に「インドへの原発輸出反対!日印原子力協定阻止」の理解と共感が広がった。

 11月中旬のモディ首相来日が確定する中、キャンペーン2016として「協定反対」の共同アピールを発し、国会議員78名を擁する「原発ゼロの会」の議員への要請を強め、院内外の運動を進めてきた。

 また、広島、長崎市長に対し、「政府に対する協定交渉の中止要請」を求めた。これは、11月7日付の各市長名の「要請書」として実現した。

 同7日の外務省交渉と院内集会は、全交の仲間の参加も得て大きく成功した。この取り組みでは、交渉に福島みずほ議員、院内集会には「ゼロの会」事務局長の阿部知子議員、世話人の玉城デニー、初鹿明博両議員が出席。国会内で阻止に向け闘う決意が述べられた。外務省交渉では、31か国、450団体、3千人を超える署名を提出した。

世界共同行動デー

 署名が予定された11月11日は世界同時行動デーとなった。首相官邸前をはじめ日本各地で、インドで作成された「日印原子力協定=人災/今すぐ止めなきゃ」ポスターのアピール行動が展開された。同様の行動は、インドの主要都市、原発予定地など世界各地でも取り組まれた。スンダラム氏は帰国し、11日のデリーでの記者会見を皮切りに原発建設予定地で活動する(5面に関連記事)。

 来日中、スンダラム氏は「Together, on the wrong side of history」(日本とインドは歴史の反対側にいる)と強調した。「核廃絶に向かう歴史の流れに日印両政府は反抗している」ということであり、政府を変えなければとの意味を持つ。

 日印市民の連帯を継続、強化し、「協定」の国会承認阻止を中心に闘う決意である。

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