2016年11月25日発行 1454号

【人権も生活も地方自治も破壊 憲法改悪反対で市民集会 市民と議員の力で 自治体意見書運動を】

 「9条だけじゃない! 地方自治も人権も生活も破壊される!」と憲法改悪に反対する市民集会が11月13日、大阪市内で開かれた。

自民改憲草案を批判

 大阪市立大学経済学部教授の中村健吾さんが「自民党の『憲法改正草案』を読み解く」をテーマに基調講演を行った。
 中村さんは「『憲法改正草案』は9条改正による国防軍の創設を狙うにとどまらず、現行憲法の3大原理をすべて否定し、それらの原理に代えて、人権に対する国益と義務の優越、自己責任、公助なき相互扶助を人びとに強要することで、日本の国家と社会全体を戦争政策と新自由主義に沿って全面的に再編しようとするプロジェクトにほかならない」と冒頭に結論づけ、基本的人権と個人の尊厳の否定を詳しく解説した。

 とくに力説したのは、基本的人権の永久不可侵性をうたい最高法規とした現行憲法97条を草案が削除したことだ。「憲法が最高法規であるのは、立法権をふくむすべての国家権力から人間の自由と権利を保護することを目的に組み立てられているからだ。ところが自民党草案は『すべての国民は、この憲法を尊重しなければならない』とした。国家権力を拘束する法規範である憲法を、戦争と国策へ人びとを組織し動員する法規範に転換しようとしている」と批判した。

社会保障の責任解体ノー

 市民集会を呼びかけた京都府向日(むこう)市議の杉谷伸夫さんと大阪府枚方(ひらかた)市議の手塚隆寛さんも自民党改憲草案を批判した。

 杉谷さんは地方自治の圧殺を指摘した。「住民は地方自治の『主権者』でなく『参画者』とされ、サービスの受け手とされる。サービス購入には負担を求める。負担できない者にはそれなりのサービスしか提供しない。自己責任を押し付けるものだ」

 手塚さんが述べたのは社会保障の公的責任の解体だ。「『家族は互いに助け合わなければならない』と家族の相互扶助を義務化し、公的責任を放棄しようとしている。貧困化が進む中で、家族の相互支援などは不可能。教育、子育て、介護施設の増設など家族を支援することが国・自治体の役割だ」

 また、平和と生活をむすぶ会の豆多敏紀さんは11月初旬に参加した沖縄・高江の座り込み行動の体験なども交えて、「辺野古、高江で繰り広げられている政府の現行法無視の暴挙は『緊急事態条項』の先取りだ」と訴えた。

市民が議会を変える

 実行委員会が提起した行動方針は、地域から改憲草案の正体を暴き改憲反対の取り組みをすすめること。とくに強調したのが自治体意見書運動だ。

 杉谷さんは「毎回の議会で憲法問題を質問することを宣言した。前回は緊急事態条項を、12月議会では地方自治を取り上げる。市民1人でもできるのが請願。請願を出すことで議会で議論させることができる」、手塚さんは「議員は誰を見ているか、決して市民を見ていない。市民が動けば議会も変えることができる」と市民と議員が地域でいっしょに動く自治体意見書運動を起こすことを呼びかけた。

 参加者からも「今日の学習はよかった。97条削減に危機感を覚えた。絶対に削除させてはならないことを市民に知らせないといけない。街頭に出て訴えよう」「改憲は実体的には進んでいる。主権者としてすべての分野で憲法の理念を生かす不断の努力が問われている」などの発言が出された。

 「憲法いかそう茨木市民の会」の山本よし子さんが「地域から改憲を止める」と来年1月の市議選にチャレンジする決意を述べ、集会アピールを読み上げた。



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