2016年12月02日発行 1455号

【みるよむ(420)2016年11月19日配信 イラク平和テレビ局in Japan カラーダ地区への爆弾攻撃の黒幕は誰だ?】

 2016年10月、サナテレビはバグダッドの中心地カラーダ地区の住民に、治安対策を口実とした道路封鎖が続いていることについてインタビューを行った。

 今年7月3日、カラーダ地区で起こった爆弾攻撃では300人もの死者が出た。2003年イラク占領以後の対市民テロ攻撃では最大規模で、その惨状は記憶に新しい。

 問題は被害の甚大さだけにとどまらない。事件から3か月もたっているのに、毎日、主要道路が検問によって封鎖される状態が続いているのだ。ある商店主によると、検問所を通るのに2時間もかかる。尋常ではない。

 住民の生活を爆弾攻撃の被害から立て直すためにも、交通を回復させて商業活動が復活できるようにしなければならないはずだが、全くそうなっていない。

 ここでもう一人の店主が指摘する。「背後に国家の権力者がいて大きな利権を持っているからだ」。この話は単なるうわさではなくて根拠がある。何と、爆弾攻撃に使われたトラックは政府省庁の立ち並ぶグリーンゾーンからやって来たものだったというのだ。

 シーア派住民の多いカラーダ地区の人出は減ってしまっている。一方で、スンニ派の多いマンスール地区には爆弾攻撃がない。それは「商業の場をカラーダ地区からマンスール地区に移したい」という「大がかりな陰謀だ」と商店主たちが指摘する。

大手の伝えぬ事実暴く

 7月のこの地区での対市民自爆攻撃の時には、サナテレビは当局の取材禁止をかいくぐって直接現場に入り、その被害の実態と市民の怒りを伝えた(9月17日配信「バグダッド市民は自爆攻撃に屈しない」)。さらに、厳しい状況の中から社会を変えていこうとするカラーダ地区市民の姿も取材している(10月22日配信「若者がイラク社会を変える―カラーダ地区インタビュー」)。

 今回は、爆弾攻撃の背後に、実はカラーダ地区から商業の実権を奪い他の地区に移そうと狙うイラクの国家権力者の策謀があったことを明らかにした。大手メディアは決して伝えない事実を、不正と闘う市民の立場に立つサナテレビだからこそ伝えることができる。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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