2016年12月02日発行 1455号

【介護従事者、当事者家族、市民が力を合わせ/尊厳ある暮らしを守る集い/介護保険「総合事業」は小規模事業所をつぶす/署名を広げ地域から声を】

 11月20日、大阪市内で「尊厳ある暮らしを守る集い」が開かれた。主催したのは「尊厳ある暮らしを!」連絡会。すべての人が尊厳ある暮らしを享受するために、医療・介護従事者、当事者家族、市民が力を合わせる市民団体だ。

 11月7日にZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)が取り組んだ中央省庁行動での厚労省交渉の様子が報告された。

 介護保険制度は3年毎に見直される。2018年の改訂で検討されていた「要介護1、2の生活支援廃止」案は見送りとなった。

 交渉参加者から「生活支援廃止を見送らせたのは、運動と世論の力。22府県、125市区町議会での反対・懸念する意見書の採択、各団体の署名や介護業界団体の反対の声が後押しした」「私たちも地域で集めた『国庫負担の倍増を求める』署名1181筆を提出した。厚労省内部に賛否両論があり、声を上げれば変えられることがわかった」「次回の厚労省交渉は国会議員の同席で、課長クラスの役人を交渉に引っ張り出す。そのためにも署名を積み上げたい」など施策を変えていく手ごたえが語られた。

重度化のおそれ

 2018年改訂の見逃せない問題が、「総合事業」だ。要支援と判定された人を介護保険から排除し、各自治体が自治体の予算で実施する独自事業だ(3面記事参照)。

 介護難民を生み出すとともに小規模事業所にとって死活となる施策に各地の小規模事業所従事者から批判の声が次々と出された。

 「基準緩和型の生活援助サービスが現行相当より2〜3割減額される。利用者にとっては負担額も減るが、既存の介護事業所は経営難に陥る。やめてほしい」「厚労省は処遇改善として1億総活躍の枠で1万円アップと発表しているが、班長や主任など昇給制度があることが条件となっている。小規模にはそんな制度などないので受け取れない」「介護度の低い人ほど、より(きめ細かく対応する)支援が必要だ。サービスが低下することですぐに重度になるのは目に見えている」「訪問介護では、信頼できるヘルパーさんが必要。風呂やトイレ掃除だけでも利用者の体調や様子が分かる。緩和型になり、無資格や近所の人が来るとなれば『利用しません』と言う声も出始めている」

保険料引き上げ反対

 総合事業は2018年4月実施に向けて各自治体で具体化の作業が始まる。

 自治体では事業所向けの説明会が始まろうとしているが、市民向けの説明会を開くところはほとんどない。

 連絡会は、「国庫負担の倍増を求める」署名の積み上げとともに自治体意見書決議運動に取り組むことを呼びかける。地域から声を上げる取り組みを重視する。ヒントとなるのが街頭署名行動だ。

 「介護問題への市民の関心は高い。向こうからやってきて署名してくれ、しゃべっていく」「若い人が署名してくれたのが印象的だった。すべての人の人生がかかっている問題だ」「いろいろな署名をしているが、『介護、これはするわ』と言う人が多い。『年金は下がるのに保険料は上がるばっかりや。なんでや』と抗議する人もいる」「最初は『介護保険改悪に反対する署名です』と呼びかけていたが、『保険料引き上げに反対する署名です』と変えたら、すぐにしてくれた。市民に分かりやすい言葉を見つけることが必要だと思った」「介護制度自体が分かりにくい。それを分かりやすく、見やすくする努力がいる」

 署名は12月19日に第2次提出する予定だ。



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